「バラードの皇帝」「鼓膜彼氏」等の異名を持つ歌手のソン‧シギョンさん。韓国では知らない人がいない国民的レジェンド歌手として認知され、「チケットの取れない歌手」のひとりとしても知られている。2025年10月には日本での単独コンサートが決定。さらに、9月17日にはすべて日本語のアルバム『しあわせのかたち』が発売になる。
また、YouTubeチャンネルでは本業である歌はもちろん、大好きだという食べ歩きや料理、そして最近では外見について学ぶ「着飾るだろうに」のコンテンツも配信し、現時点でフォロワー数は212万人を超えている。
さらにNetflixでは、松重豊さんと共演するグルメ番組『隣の国のグルメイト』が配信中。新たなエピソードが配信されるたびにランキングの上位にあがっている。松重さんはシギョンさんのYouTubeチャンネルにも出演し、113万再生を超えている。
そんなソン・シギョンさんの魅力をお伝えする連載『ソン・シギョンの〜짠(チャーン)〜乾杯!』。10回目となる今回は、韓国と日本を行き来する中で、シギョンさんが「へぇ~」と感じた韓国と日本のちょっとした違いについて語ってもらった。
韓国料理は味が薄い?
――料理通で知られるソン・シギョンさん。Netflixの『隣の国のグルメイト』で松重豊さんとの共演のなかで、韓国の料理と日本の料理ベースとなる「味付け」の違いに気づかされたという。
「先日、松重さんに『韓国は味付けが薄いですね』と言われ、ちょっと驚きました。と言うのも、僕は今までそんなふうに考えたことがなかったからです。そのときは『えっ、そうですか!? 韓国料理って、赤くて、辛くて、酸っぱくて、甘くて……という感じですよね!? 味が薄いということはないと思うんですけど……』と松重さんに返したのですが、考えてみたらそれは『自分で味の変化をつけているから』ということに改めて気づきました。
韓国人がとてもよく食べる『ソルロンタン(牛の骨や肉を煮込んだ乳白色のスープ)』がいい例ですが、自分で塩などを入れて自分好みの味に調整しながら食べるんですね。自分好みに調味料でアレンジして完成させるわけです。でも日本の、たとえば豚骨ラーメンなどは、ネギや紅ショウガなどの薬味は自由に入れても、自分で料理自体の味を作って調整することはしませんよね。
フライドチキンや鶏の唐揚げも同様で、日本では最初から味がついているので、せいぜいレモンを絞るか、人によってはタルタルソースをかけるくらい。でも韓国のフライドチキンは違います。肉には多少塩味がついているけど衣にはついてない。だから自分でヤンニョム(唐辛子の粉、コチュジャン、醤油、しょうが、にんにく、味噌などを混ぜた合わせ調味料)や塩をつけて食べる。つまり、韓国料理はベースには強い主張はなく、味変で自分好みに作っていくというものがとても多いわけです。
松重さんと番組をやっているとこういう、「そうだったのか」「へぇ~」という違いに気づくことがとてもたくさんあります。これからもこういった違いに気づく機会があると思います。一緒にご飯を食べたり長時間過ごしたりしていると、お互いに『あっ!』となる瞬間が楽しいんですよ」
韓国はスープの文化
――韓国ドラマを観ていると、登場人物が屋台で「おばさん、スープちょうだい」と言って、紙コップにおでんの汁を入れてもらって飲むシーンを見かけることが多い。日本では見ない光景だが、韓国では当たり前のことなのだという。
「おでんについて、以前日本の方と話したときにも『韓国の人はおでんのスープだけ飲んだりするけど、日本で、スープをくださいと言いにくい』と話していました。僕らからすると『なんで? もらえばいいじゃん、タダだし。余ったらどうせ捨てちゃうんだし』と思うのですが、日本の人は『いやいやそれはお店のものだし、メニューにないものだから失礼でしょ?』と考える。
韓国人は『どうせ捨てるならちょっとください』となりますが、そこも文化の違いですね。
もったいないとか捨てちゃうんだからというだけでなく、そもそも韓国はスープの文化なんです。とにかくスープが好き。調子が悪いときに温かいスープを飲むと、体が温まって具合が良くなるじゃないですか。だから風邪をひいたときも元気になるために、まずはスープを飲む。肉じゃなく、スープなんです」
韓国のお酒のマナーは?
――お酒の席でのマナーも韓国と日本とでは微妙に違う。日本では同席している人のグラスのお酒が減っていると誰かがお酌して注ぎ足すが、韓国ではグラスが完全に空になってから注ぐのが一般的だとソン・シギョンさんは言う。
「これは少し前の韓国の話ですが、飲み会の席ではまず『乾杯~!』と言ってみんなで同じもの、焼酎なら焼酎、ビールならビールを飲みます。同じ飲みものの同じ量を、全員が同じペースで飲むんですね。で、空になったら注ぐ。足並みを揃えて飲むというスタイルが当たり前でした。
大事なのは飲み干してから注ぐことで、残っているときに注いでしまうのは平等じゃなくなるからダメ。昔は『平等であること』が大事だったんです。その名残が残っているから、今も飲みかけのビールには注ぎ足しません。
目上の人と飲む時は目下の人がお酌すると喜ばれますが、人によっては『いやいや、手酌でいいよ』と断られることもあります。その場合は相手の言うとおり、自身で注いでもらいます。
また、グラスを空にすると注がれてしまうから、『今はちょっと一息いれたい』という意味を込めて、あえて少し残している人もいます。そこに無理やりお酌されてしまうと少しプレッシャーに感じる。だから目上の人にお酌したい場合、韓国では相手がグラスを空にしてから『僕が、私がお酌します』がいいと思います」
音楽番組で1位をとって泣かなかったら……
――食文化だけでなく、音楽番組にも日本と韓国では違いがあるという。韓国の音楽番組はランキング形式で行われ、1位を獲得した歌手やグループは、泣きながら感謝の言葉を述べるのがお約束だが、その様式美から外れると世間の厳しい声を受けることもあるのだそう。
「僕が昔、テレビの音楽番組に出演したときのことです。韓国の音楽番組は順位を発表するのですが、そこで初めて1位をとった歌手は涙ながらに『支えてくれたファンの皆さんと苦労したスタッフのおかげです、本当にありがとうございます!これからも頑張ります!』とお礼を言うのが定番なんですよ。
でも僕は1位をとっても泣かなかった。もちろん普通に『これはファンの皆さん、僕のスタッフのチームのものだと思います。ありがとうございます』と感謝の言葉は述べたのですが、『あいつ、なんで泣かないの?』『感謝してないの!?』とヒンシュクを買ってしまったことがありました。最近の歌番組はそこまではなくなってきましたが、韓国ではエモーショナルな感情を表にいかに出すか、ということも大切な要素になることが多いです。
現在、9月に発売になる日本のアルバム『しあわせのかたち』の制作中です。これから日本で撮影も控えているので少しダイエットしないとね……! アルバム発売、楽しみにしていてください。
連載『ソン・シギョンの〜짠(チャーン)〜乾杯!』の第11回は7月24日配信を予定しています。お楽しみに!!
ソン・シギョン(SUNG SI KYUNG)
⽣年⽉⽇:1979 年4⽉17⽇、⾝⻑:186cm、⾎液型:A型、出⾝校:⾼麗(コリョ)⼤学社会学科、同⾔論⼤学院卒業、⾔語:韓国語、英語、⽇本語※日本語能力試験最上級「N1」合格。
韓国本国では、知らない人はいない国民的人気歌手。その活躍は歌手活動のみにとどまらずMC、タレント、YouTuber、などエンターテイナーとして多岐に渡る活動を行うマルチタレント。自身の YouTube チャンネルは、登録者数が 212万人を超え、歌以外にゲストとのトークや、料理、食べ歩きなどのコンテンツで、国内外の有名アーティストや俳優から出演オファーが来る人気のチャンネルとして注目されている。今年秋に日本での単独コンサートとミニアルバムの発売を予定している。