子どもに英語教育を受けさせるべきか……。子どもを持つ親なら、一度は悩んだことがあるだろう。『子どもの才能の伸ばし方ベスト100』の著者で、世界中のありとあらゆる子育て法を実際に試したという相馬れいこ氏が、子どもの英語力を伸ばすためにやるべきこと、やってはいけないことをアドバイスする。
第二言語を学ぶのは母語が定着してから
親は子どもに対して、英語教育を絶対に受けさせるべきなのでしょうか?
ここ数年、AIの進化により、外国語を習得する必要性が薄れてきているように感じます。ですが、現実的に考えると、英語は今後も必要なスキルとして求められ続けるでしょう。
小学校・中学校・高校では、文部科学省が定めた学習指導要領に沿って教育が行われています。小学校では3年生から英語学習が始まり、5年生から通知表に成績がつきます(2025年4月30日現在)。
大学入試がある限り、テストの点数も間違いなく評価されるでしょう。学校の評価で人生がすべて決まるわけではないと思っていても、実際は多くの人が子どもに英語教育を受けさせるでしょうし、かくいう私も自分の子どもたちに英語教育を受けさせています。今後も、英語教育を選択する家庭は増えてくるでしょう。
とはいえ、言語は本来、コミュニケーションツール。今の日本の学校環境が必ずしも最高とは言い切れません。
そもそも言語学習については、脳の発達が大きく関係します。言語にはそれぞれ異なる音があり、その音を聞き分ける能力は幼児期に鍛えられるため、早期の多言語教育には一定の効果があります。
一方で、母語がしっかりと発達していない段階で多言語を学ぶと、脳に過度の負担がかかり、うまく処理できない場合もあります。
したがって、言語学習を進めるうえでは、両親が同じ言語で会話する家庭では、その言語を第一言語として育てること。そして、母語がしっかり定着してから第二言語を学び始めるのが理想的だと考えています。
日常生活ではひとつの言語を使おう
さらに、私が大切にしているのは「親ひとりにつきひとつの言語を話すこと」。子どもが「この人は日本語を話す人なんだな」と認識できるように、会話に使う言語は一貫させることが重要です。
もし親がバイリンガルで、2つ以上の言語を話してしまうと、子どもが混乱することがあります。できれば、日常生活においては1つの言語を使い、シチュエーションに応じて他の言語を使い分けるといいでしょう。もちろん、家庭内で「日本語で話す」などとルールを決めておくことも大切です。
ただし、英語が話せる友達が遊びに来たときなどは、相手を気遣って英語を使うのもひとつの方法。言語を使い分けることで、コミュニケーション力も高まるでしょう。
国際結婚をした家庭では、両親がそれぞれ異なる母語を持っているケースもあります。こうした家庭では、それぞれの言語を使うほうが自然です。家族内で使用する言語を決めておくといいかもしれません。
「異文化体験」をセットにすると効果的
なお、言語学習を行う際は、異文化体験もセットにするとより効果的です。海外留学や旅行、サマースクールなどはハードルが高いですが、日常的にできることもあります。
たとえば、各国の料理が食べられるレストランに行くのです。その国の文化やマナーに触れながら、自然と言葉を学ぶことができます。
私たちもブラジル料理のレストランに行ったときは、いつもスタッフとポルトガル語で挨拶を交わし、異文化に触れています。いつもと違う風景に、子どもたちも大喜び。楽しんで異文化を学んでいます。
ほかにもスポーツ観戦をしたり、ダンスを体験してみたりするのもいいでしょう。私自身、スペインに興味を持ったきっかけは、パエリアを好きになったことからでした。そこからフラメンコを習うなど、自分なりに異文化を楽しんでいます。
あるいは日本国内であれば、方言を学ぶのも面白い経験になるでしょう。私は15年間神戸に住んでいたため関西弁が定着していますが、愛媛弁や標準語も話します。
言語を学ぶことで新たな世界が広がる
異なる言語や方言に興味を持つことは、コミュニケーションを取りたいという人間の本能的な欲求。大人が方言に興味を持つと、子どもたちも興味を持って学ぶかもしれません。
言語学習は、豊かな言語環境で、たくさんの語彙に触れることが重要です。絵本や童謡、俳句などを通じて、同じ日本語でもさまざまな言葉に触れさせることが、言語教育において大切だと感じています。
このように、大人が言語への興味を引き出す体験を提供することで、子どもは言語学習に対する興味を持つでしょう。
広い視野で多様な文化や言語に触れさせると、子どもたちの成長にもきっといい影響を与えるはず。そうすれば、AIの進化が進んでも、言語習得の目的である「コミュニケーション」を大切にできるのではないでしょうか。
私自身、40歳を迎えてからイギリス英語を習得しようと、日夜奮闘しています。子どもたちが将来、どんな言語や文化に興味を持つかはわかりませんが、言語を学ぶことで新たな世界が広がることを楽しみにしています。
もしかしたら将来は、“宇宙語”を学ぶ日が来るかもしれませんね。