「予算は限られていても、満足のいく結婚式がしたい」
「豪華な演出より、自分たちらしさを大事にしたい」
「かけたいところにだけ、しっかりかけたい」
最近は、「自分らしさ」を打ち出しながら、限られた予算をうまく使いたい、という志向が強いというが、それでも、結婚式の費用相場は「全国平均 374万円」(ゼクシィ結婚トレンド調査2024首都圏より)と、決して安くはない。
お金も時間も労力も注ぎ込んで、後悔が残った、なんてことにならないよう、結婚式のヒントをお伝えする連載の後編。
前編「1輪の花に見えない手間とコストが!結婚式のプロが明かす『見た目とコストが比例しない』理由」では、かけた金額に結婚式のゴージャス感が見合わないと感じるケースを、例をあげてご紹介いただいた。
無料で結婚式相談を受けたり、式場選びを手伝ってくれる「トキハナ」の、現役プロデューサーの渡辺優子さんの寄稿でお届けする。
業界の常識「パッケージ型」「セレクト型」とは
予算に関わる、もうひとつの大きな選択が、式場などが用意した「パッケージ型」を選ぶか、自分たちで選ぶ「セレクト型」か、でしょう。
「パッケージ型」とは、装花・ドレス・ヘアメイク・司会者・映像・ギフトなどがあらかじめセットで組まれており、打ち合わせもスムーズに進みやすいスタイル。特に準備期間が短い方や、多忙な方にとっては安心感のある進行が魅力です。
一方、「セレクト型」は、必要なパートを自由に選べたり、持ち込みが可能だったりと、ひとつひとつを吟味して自分たちらしいかたちを作っていけるスタイル。選択の幅が広く、自分たちのこだわりを反映しやすい反面、情報収集や比較検討の手間がかかるという側面もあります。
たとえば引き出物。パッケージ型では、式場と提携しているギフト会社のカタログの中から選ぶことが多く、数百ほどの選択肢が用意されていることもあります。
一方で、「どうしてもこれを贈りたい」という品がカタログにないこともしばしば。
それでもどうしても、「持ち込みたい」となった場合、そもそも「持ち込み」が禁止されていたり、1点につき数百円前後の「持ち込み料」がかかって、何万円もの手痛い出費になってしまうことも。引き出物にこだわりがある方は、最初に確認しておくといいですね。
セレクト型の式場では、ギフト会社から選べたり、会社によっては数万点以上のギフトを扱っているところもあり、選択肢が多いのが魅力です。日用品、ブランド雑貨、食べ物、体験ギフトなど、ジャンルも豊富で、「これを贈りたい」が見つかりやすいのは、こうしたスタイルかもしれません。
ただ、選べる幅が広くて迷って決められない、なんてこともあるので、最近では、予算やゲストのタイプに合わせて候補を絞り込んでくれるギフト会社も増えてきています。
どれが正解ということはなく、選んだあとに「こういう理由で、この形式を選んだ」と納得できることが、満足につながるのではないでしょうか。
こだわりを絞ることで満足度が上がることも
「式場に何を求めるか」という問いは、突き詰めていくと「誰のために、どんな時間を贈りたいか」という本質にたどり着きます。
たとえば、遠方から来てくれる親族に感謝を伝えたい人は、移動のしやすさや会場の設備、宿泊の有無といった“過ごしやすさ”が大切になるでしょうし、長く付き合ってきた友人たちと肩肘張らずに笑い合える場にしたい人は、空気感や演出の自由度、スタッフの柔軟性を重視したくなるはずです。
美容業界で働くエステティシャンの瑞希さん(34)と、会社員の陽真さん(32)は、都内のレストランで結婚式を挙げました。
東京出身のふたりは、家族や友人が来やすいようにと、最初は立地の良いゲストハウスを中心に見学を進めていました。
忙しい仕事の合間を縫って会場をめぐるなかで、瑞希さんがふと、「私たち、食べることが好きだったよね」と口にしたそうです。
思い返せば、仲の良い友人たちも、みんな食べることが好きで——そうやって自然に距離を縮めてきた仲間ばかり。
そこから、ゲストハウスだけでなく、レストランやホテルにも視野を広げて考え始め、最終的に、瑞希さんの好みに合う料理のクオリティと、スタッフの丁寧な対応に安心感を抱いた都内のレストランに決めました。
「ゲストに料理だけは絶対に満足してもらいたい」という想いを軸に、他の部分にはあまりこだわりすぎず、準備を進めていったそうです。演出をあえて減らした分、歓談の時間を長めにとったり、テーブルの配置も話しやすい距離感になったと言います。「こんなにも話せる時間があるとは思わなかった」と、ゲストにとっても印象的で大切な時間となりました。
選ばなかったことに意味がある
「自分たちらしさ」とは、何かを“加えること”ではなく、“引き算の中にこそ表れる”こともあります。派手な演出がないからといって寂しいわけではない。
高価なアイテムがないからといって、安っぽくなるわけではない。
むしろ、「この人たちは、誰にどんな想いを届けたいのか」がはっきり伝わる式ほど、ゲストの心に強く残るものです。
「選ばなかったこと」にも、意味がある。
「これだけは届けたい」という気持ちが軸になれば、どんな選択もその人らしい形に変わっていきます。
見積書の中の数字でははかれない、けれど確実に心に残る“納得のかたち”は、そんなふうにして家族やゲストにも伝わっていくものです。
【瑞希さん・陽真さんの契約時見積もり額】レストラン会場/歓談重視:50名350万円
*トキハナへの相談料は無料です