「FRaU SDGs eduこどもプレゼン・コンテスト」の応募が2026年8月1日にスタートした。2025年、コンテストの二次審査に進んだ俊豪さん。発表したテーマは、「不登校からホームスクールを選べる社会へ」だ。俊豪さん自身、3歳で不登園を経験し、4回転園。私立小学校に進学した後も学校生活が合わず、小学1年生からホームスクールという学び方を選んできた。自身の経験をもとにホームスクールの現状から、「国立・公立・私立と同じように、ホームスクールも当たり前の選択肢として認められる社会にするにはどうすればいいのか」という考えをプレゼンした。
前編【3歳で不登園、小学校も不登校の少年が、小6で「英検準1級」に合格。学校に行かず、家でどう学んだのか】では、俊豪さんが不登校になった経緯や、そのときに母親がどのように向き合い、ホームスクールという学び方を選んでいったのかを紹介した。ホームスクールの中で、俊豪さんは自分で興味を持ったことを見つけ、実際に体験しながら学びを広げていく。その中で、特に英語に夢中になり、自分から学ぶようになっていった。後編では、俊豪さんがアメリカの高校を目指した理由や、ホームスクールでどのようにアメリカの受験勉強を進めたのかをお伝えする。
きっかけは「蚕」
俊豪さんがアメリカを意識するようになったきっかけは、小学3年生のときの家族旅行だった。
「ロサンゼルスにいったとき、すごい楽しかったんです。現地の人と英語で会話ができたことが嬉しかったですし、将来ここに住んでみたい、ここで勉強できたら楽しそうだなと思いました」
ただ、俊豪さんがアメリカに惹かれた理由は、英語だけではなかった。ホームスクールで、興味を持ったことを自由に学んできた俊豪さんは、小学2年生の頃から遺伝子研究に興味を持つようになった。
きっかけの一つは、家族で訪れた伊勢原市立子ども科学館だった。そこで顕微鏡を触る体験をしたり、蚕の卵をもらったりした。
「遺伝子の本をたくさん読むようになって、どんどんハマっていきました。遺伝子は一箇所変わるだけでも大きく変化するというところが面白いです。例えば、GABAトマトのように、一箇所の変化によって性質が変わるものがあったり。また、光る糸を出す蚕やクモの糸を出す蚕を作る研究があることも知って、そんなことができるんだとさらに興味が広がっていきました。自分でも新しいものを作れるかもしれないと思って、『これとこれを掛け合わせたらどうなるんだろう』と考えるのが楽しくなって、実際に蚕を取り寄せて、今もうちには蚕がいます」(俊豪さん)
小学4年生になると、今度はパイナップルの品種改良にも興味を持った。さらに学びを深めるため、子どもの探究活動を応援する「ロートこどもみらい財団」に応募。沖縄の農業研究所を訪れ、専門家から遺伝子組み換え研究について話を聞いたことで、遺伝子の世界への関心はますます広がっていった。
中学2年生の夏、再び旅行でロサンゼルスを訪れた際には、大学を見学できるツアーに参加し、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)を訪れた。
「自分がロサンゼルスが好きなので、UCLAの見学に行きました。実際に行ってみると、キャンパスがすごく広くて、研究施設もあって、学びたいことができる環境があるなと感じました。遺伝子研究でノーベル賞を受賞したジェニファー・ダウドナ教授が、UCLAの姉妹校であるUC Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)で教授をされていることもあって、将来はどちらかで学べたらいいなと思っています。自分が興味を持っている研究ができそうな環境があって、すごく魅力的に感じました」(俊豪さん)
遺伝子研究が日本より進んでいるアメリカは、俊豪さんが夢中になっていることを、思いっきり学べる場所だった。
アメリカ進学に向けて必要だったこと
「アメリカの学校に行きたい」と親に初めて伝えたのは小学5年生のときだった。初めは中学からの進学も考えていたが、費用や治安など現実的な部分も考え、高校から挑戦することに決めた。また、その時間を使って英語力をさらに伸ばしたいという考えもあった。
アメリカの高校受験は、日本の中学2年生のときに行われる。俊豪さんは受験に向けて、ただ英語を勉強するだけではなく、英語を使って教科を学ぶ準備も始めた。無料のオンライン学習サイト「Khan Academy」を使い、英語で数学や化学、歴史などを学んだ。また、アメリカのオンライン私立学校アセルス・アカデミーで、中学校卒業資格も取得した。日本にいながら、少しずつアメリカの学習環境に近づいていった。
さらに、英語で授業を受けられる力を証明するため、「Duolingo English Test」というオンラインの英語試験も受験した。この試験は、読む・聞く・話す・書くという4つの英語力を測るもの。
「入学すれば授業も生活もすべて英語になるので、その環境で困らないように、とにかく単語帳をやり込みました。あとは、テスト対策ができるサイトを使って勉強しました。小学校の頃から英語の勉強のために自分でYouTubeチャンネルを作って発信したり、リスニングや発音の練習も続けていたので、この時はテスト対策に集中することができました」(俊豪さん)
多くの教育機関では160点満点中120点以上が一つの英語力の目安とされている中、俊豪さんは130点以上を取得した。
自分で積み重ねてきた経験が武器に
「学校は、いろんな方にお話を聞いたり、説明会に行ったりしながら、自分で決めました。選んだ理由は、遺伝子系の勉強ができる環境があることと、実際にUCLAに行った先輩方がいること。出願するにも費用がかかるので、専願で応募しました」(俊豪さん)
アメリカの高校受験では、英語で書くエッセイに加えて、これまでどのような活動をしてきたのかをまとめるポートフォリオの提出も必要だった。しかし俊豪さんには、小学校1年生からホームスクールで積み重ねてきた経験があったので、ポートフォリオに書く内容に困ることはなかった。小学2年生から続けてきた遺伝子研究だけではなく、自分でアート作品を制作して個展を開くなど、興味を持ったことを実際の行動につなげてきた。これまで「やってみたい」と思ったことに一つずつ取り組んできた結果、振り返ってみると、自分自身でも驚くほど多くの経験が積み重なっていた。
一方で、英語のエッセイは別の準備が必要だった。自分で書いた文章をAIに採点してもらい、修正することを繰り返しながら、どうすれば相手に伝わる文章になるのかを考えて完成度を高めていった。
「15分ほどの受験面接もあって自宅からオンラインで受けたんですが、私は少し離れたところから緊張しながら見守っていました。でも、私の方がドキドキしていたくらいで、息子は意外と落ち着いていて。しっかり受け答えもできていたので、『ああ、よかった』ってホッとしました」(母親)
そして中学2年生の2月、合格通知が届いた。
メールを開いた瞬間、俊豪さんだけでなく、母親も父親も、飛び上がって喜んだ。小学校1年生から、学校という決まった形ではなく、自分に合った方法で学び続けてきた時間が、一つの結果につながった瞬間だった。さらに、これまでの活動や努力が評価され、年間1000万円を超える学費を半額にできる返済不要の奨学金も得ることができた。
8月から、俊豪さんはアメリカで高校生活を始める。
「ハリー・ポッターが好きで、寮に憧れていたこともあって、入ることに決めました。今まで経験はないけど、バスケにも挑戦してみたい」(俊豪さん)
将来の目標は、遺伝子研究を通じて、気候変動の影響を受けにくい新しい食品を作り、世界の食糧問題の解決につなげること。不登校をきっかけに、俊豪さんはホームスクールという新しい選択をした。そこで身につけた「自分で学ぶ力」は、これから始まるアメリカでの高校生活でも、大きな力になっていく。
構成・文/峯重咲希(FRaUweb)