生物について知ることは、自分自身を知ることであり、私たちを取り巻く生きものや環境の成り立ちやかかわりあいを知ることといえます。その生物が植物でも同様です。
四季のある日本では、春のサクラの花や梅雨のアジサイ、夏の日差しの下に大輪を開くヒマワリ、そして秋の紅葉や落葉と、植物が季節の移り変わりを最もよく教えてくれます。これは、植物の成長が、光、温度、水分、重力などさまざまな環境要因によって大きな影響を受けているからに他なりません。
そこで、私たちにとって最も身近な生物である植物のライフサイクルを支えている生理的な機構についての興味深いトピックを、生物学の基本から最新の話題まで、網羅的に解説した入門書『大人のための生物学の教科書』からご紹介していきましょう。
葉が光のほうに屈曲する「光屈曲」を起こす、植物ホルモン「オーキシン」の働きについての解説をお届けしましたが、引き続きこのオーキシンのさらなる働きについて解説します。植物は上に向かって茎や幹を伸ばしていきますが、植物は重力を感じることができるのでしょうか。
※本記事は『大人のための生物学の教科書 最新の知識を本質的に理解する』を一部再編集の上、お送りいたします。
重力屈性とオーキシン
鉢植えの植物を横にしておくと、根は重力方向に、茎葉は重力方向とは逆方向に伸びていくのが観察される。重力に対する地上部と地下部での真逆の反応はとても面白い。
これに関しても、茎葉でも根でも、重力方向にある組織でオーキシンの応答が高まっていることがわかっている。それではなぜ地上部と地下部では逆の反応が起きるのだろう?
これは、過剰なオーキシンの応答が成長を阻害することと、組織ごとに成長を促進するオーキシン最適濃度が変わることで説明されている(図「茎と根の重力屈性の違い」)。
一般的に根では茎に比べてオーキシンへの感受性が高く、茎葉で細胞伸長を促進する濃度では、根では逆に伸長を抑制するのである。根では重力側の細胞の成長が抑えられることで重力方向とは逆側の組織の伸長が進み、根の先端が重力の方向に進んでいくというしくみである。
植物は、どうやって重力を感知するか
植物では根の先端にある細胞(コルメラ細胞)にアミロプラストというデンプン粒をためこんだ色素体がある。この色素体ができない変異体や、コルメラ細胞をレーザーで破壊すると重力屈性が低下する。
さまざまな生物が重力感知のために体内に石(平衡石)をもっているが、植物においてはアミロプラストが平衡石のはたらきをしていると考えられており、コルメラ細胞内のアミロプラストの分布とオーキシン移入/移出にかかわるタンパク質分布との関係などが調べられている。
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