「勝負」を支配する〈数の法則〉がある!
ギャンブルの勝ち負けは「運の良し悪し」に左右されるイメージがありますが、じつは確率・統計の知識に基づく「期待値的に正しい」賭け方があります。
胴元はなぜ、「必ず儲かる」のか? パチンコ店はなぜ、たまった玉を「いったん換金しろ」と言うのか? 「本命」と「大穴」、どちらで勝負すべきか? 「必勝戦術」のあるゲームとないゲームはどう違うのか?……
そんな素朴な疑問から、世に蔓延する「必勝法」のウソをあばき、「数学的な裏づけに基づく賭け方」を伝授する話題沸騰の書『ギャンブルのからくり 確率・統計であばく「必勝法」のウソ』(講談社ブルーバックス)が登場します。
ブルーバックス・ウェブサイトでは、この書から興味深いトピックの数々をご紹介していきます。今回は、確率論の基本を理解するための面白い例題にチャレンジしていただきます。直感でイメージする数字と、実際の計算結果とがこんなに違うなんて……!?
*本記事は、『ギャンブルのからくり 確率・統計であばく「必勝法」のウソ』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。
確率論は「直感を裏切る」…誕生パーティー問題
確率論の計算は、足し算、かけ算、割り算、順列・組合わせ、などをいくつか使用しておこなわれる。計算自体はそれほど難しくなくても、正しい式を正しい方法で使うことは、なかなかに難しいことである。
次の例題をやってみてほしい。
例題 マリエの誕生パーティー 問題A
11月25日に誕生日を迎えるマリエは、パーティーに招待する客の人数について悩んでいる。マリエとしては、「自分と同じ誕生日の人」が客の中にいる可能性を半分以下にしたい。 さて、何人までなら招待できるだろうか。
ただし、1年は365日とし、実際に計算しなくとも、考え方(概念、式)だけでよい。
直感的には365日の半分以下、つまり182人なら、同じ誕生日の人のいる確率は半分以下だろうと考える。
しかし、これが確率論の常識(直感)と実際の差であり、正しい考え方は次のようになる。
マリエの自宅に1人の客が入ってきたとき、その人の誕生日がマリエと異なる確率は365分の364である。1人目も2人目もマリエと異なる確率は、両者をかけ合わせることで得られる。すなわち、(364/365)×(364/365)である。
このように、1人増えるごとに365分の364をかけて、それが50%を割るのはいつか、という問題に帰する。結局、式(考え方)は次のようになる。
(364/365)ⁿ<1/2を満たす最大のnは何か
この式を計算すると、nが253のときに初めて2分の1以上となる。つまり、答えは「252人まで招待可能」である。 直感とは、かなり違った数字なのではないだろうか。
お客どうしも、同じ誕生日は避けたい
ここで、問題をほんの少し変えてみよう。
例題 マリエの誕生パーティー 問題B
マリエはこう考えた。「私と同じ誕生日の人」がいないのではなく、半分以上の確率で「すべての客に同じ誕生日の人がいない」ようにするには、何人まで招くことができるのかしら、と。
マリエに代わって、すべての客の誕生日の一致する可能性が半分(50%)以下になるギリギリ(最大)の人数を考えてもらいたい。
この問題も考え方(概念、式)だけで、 実際に計算しなくてよい。
この例題の答えは、ウソだと思うかもしれないが、マリエを含めて「23人」いれば、誰か2人以上の誕生日が一致する可能性が50%を超える。
どうしてこんなに少ない人数になるのだろうか。
招待客は、まさかの「少人数」になってしまう
計算は次のようになる。
まず、1人目の客Aという人の誕生日が、マリエと同じ11月25日でない可能性は「365分の364」となるのは前の設問と同様である。ここで、Aの誕生日を仮に11月26日としておこう。
2人目の客Bが、マリエともAとも誕生日が異なる可能性は、11月25日と26日以外ならOKなので「365分の363」 である。以下も同様に、新しい客が来るたびに
(365-すでに部屋にいるマリエを含む人数)/365
をかけ合わせ、 それが2分の1より小さくなる分岐点を探せばよい。
nをマリエを除いた客の数とすると、
(364/365)×(363/365)×(362/365)×(361/365)×…×{(365-n)/365}≦1/2
を満たす最大のnの値を求めることになる。
この式は、マリエを含むn+1人の誕生日が一致しない確率を計算しているのだが、実際に計算すると、n+1が23のとき、計算結果は2分の1を上回る。
したがって、n+1=22人までなら誕生日の一致率は50%以下であり、その22人の中にマリエ自身も含まれているので、招待できる人数はわずか「21人」となるのである。
別の言い方をすれば、たとえばサッカーの試合で両チーム11人ずつが対戦し、審判が1人いるとすれば、フィールド内にいる23人のうち誰か2人の誕生日が一致する確率は50%以上である、ということができる。
確率論に関する格言…「直感を信じるな」
40人程度のクラスで、誰かと誰かの誕生日が同じであることを発見すれば、たいていの人は「まあ、偶然ね!」といった反応を示す。
しかし、確率論的には、より必然のほうに近いと言えるのである。
「マリエの誕生日」に関する例題AとBとは、人間の直感がいかにあやふやなものであるか、そして確率というものが、いかに誤解されている分野であるかを如実に示してくれている。まさに、「確率論に関しては直感を信じるな」なのである。
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