『不登校から人生を拓く――4000組の親子に寄り添った相談員・池添素の「信じ抜く力」』(講談社)は、40年にわたり、4000組以上の不登校の親子に寄り添ってきた相談員・池添素さんに、ジャーナリストの島沢優子さんが丁寧に取材を重ねてまとめた一冊だ。発売を記念して、池添さんの地元・京都の大垣書店イオンモール京都桂川店でトークイベントが開かれ、約100人が参加した。
イベントレポート前編【「何気ない一言」が、不登校の親を追い詰める…学校の先生が手放したほうがいい思い込み】では、「来てもらえたらなんとかします」と話す学校の先生に池添さんがどのような思いを伝えているのか、そして親はどのようなスタンスで学校と向き合えばよいのかについて紹介した。後編では、親が「不登校支援」とどのように関わればよいのかを紹介する。親にとって「重荷になる支援」とは何か。
支援は“つながり”で成り立つ
池添素さん:不登校支援において大事なのは、ネットワークです。支援は一人でやってはいけないと思っています。必ず誰かとつながることが必要ですし、応援団は多い方がいい。その子や家族にとって重荷にならない応援団であれば、なおさらです。
そのためには、学校の先生はもちろん、地域の人や子どもが関わっている場所の人たちと、顔の見える関係をつくっておくことが大切になります。よく「連携」と言いますが、私は網目のようにつながったネットワークが大事だと思っています。それが子どもや家族を支えるセーフティーネットになります。
子どもには、いろいろな選択肢がある方がいいじゃないですか。どんな選択をしたとしても、安心して頼れる場所や人がある。その状態をつくっておくことが、支援者や応援団の役割だと思います。だから、一人で抱え込んではダメなんです。
島沢優子さん:「重荷になる応援団」という人もいるんですよね。どういう人ですか。
池添さん:例えば、相談に行ったのに余計しんどくなって帰ってきた、というケースです。「不登校ビジネス」と呼ばれるものもあります。スマホを取り上げたり、特定の対応をしたりすれば、短期間で学校に行けるようになるといったものです。実際にお金を払って利用したけれど、子どもが荒れてしまって、「これは違うな」と思ってやめたという話も聞きます。
情報がたくさんあると、「これをやってみようかな」と思ってしまうこともありますよね。ただ、私はそうした経験をしたとしても、そこからやり直すことはできると思っています。たとえスマホを取り上げて子どもが荒れてしまったとしても、そこから関係を立て直していくことはできます。でも、その分時間もかかりますし、子どもも傷つきます。親もしんどい思いをしますよね。
答えは親自身の中にある
池添さん:また、「親はこうしなさい」「こうあるべきだ」「こうしなければならない」といったアドバイスもあります。もちろん、良かれと思って言ってくれているのかもしれません。でも、そういう言葉は全部聞き流して、そこから離れていいと思っています。
自分が「しんどいな」「何か違うな」と感じたら、その感覚を信じてあげてほしいんです。子どもを信じる前に、まず自分を信じてあげる。そして、その気持ちを誰かと共有して、「そうだよね」と受け止めてもらえる人が近くにいると、本当は一番いいんですよね。ただ、それがパートナーとは限りませんし、身近にそういう人がいないこともある。そのあたりの難しさはあると思います。
島沢さん:不登校をテーマにした本はたくさんありますし、子育て本もそうだと思います。そうした本を並べてみると、支援に関わっている方や大学の先生などが、「こうしたらいい」「ああしたらいい」「こう考えたらいい」とアドバイスを伝えるノウハウ本が多いように感じます。
そんな中で池添さんと接していて印象的だったのは、「答えは親御さんたちの中にある」ということを一貫しておっしゃっていることでした。先ほどのお話にもありましたが、親御さん自身が気づき、自分なりの答えを見つけていくことが大切ですよね。
『不登校から人生を拓く』は、そうした考え方を伝えたいと思って書いた本です。何かを教える指南書というよりも、不登校を経験した親子が何を感じ、どのように変化していったのかを丁寧に取材し、その過程や池添さんの言葉をできるだけそのまま伝えたいと思って書きました。
構成・文/峯重咲希(FRaUweb)