「数年前、一人暮らしの義父が朝ベッドから起きようとして、身体を動かせなくなったそうです。しゃがんだ状態で身動きもできず、そのまま3日間も意識を失っていたところ、運よく息子が家を訪れて発見、救急車で病院に運ばれました。
結果、かろうじて命はとりとめたのですが、片足は壊死しており、退院後は車椅子生活になってしまいました。医者からは、『あと一日でも発見が遅れていれば亡くなっていた』と言われました」
そう語るのは、都内の印刷会社に勤める土屋誠二さん(仮名、59歳)だ。
「もしも」の時に…助けてもらえない可能性
現在、高齢者の一人暮らしは900万世帯を超え、過去最多を更新している。孤独死(一人暮らしで自宅で亡くなる人)も増え続けており、全国で7万6020人に上る(’24年)。
その多くは男性で、年代別では65歳以上が8割弱、40~64歳が2割となる。冒頭の男性のように、一人暮らしの人が「もしも」の時に助けてもらえないことは多い。
さらに、単身の高齢者の半数近くが気にしているのが、死後に発見されず、自分の遺体が放置されてしまうことだ。実際、孤独死した人の3割は、死後8日以上経過してから発見されている(’26年、内閣府)。
今や誰にでも、家族が知らない間に、または本人が望まぬ形で、たった一人で亡くなる可能性がある。万が一の時に、できるだけ早く人に見つけてもらうためには、どうすればいいか。
『おひとりさま時代の死に方』を著した社会学者で、エンディングノートの生みの親でもある井上治代氏が解説する。
「緊急時に連絡できる発信機や、定期的に安否確認をしてくれる見守りサービスを使うことをお勧めします。押すだけで登録済みの連絡先に助けを呼べるペンダント型の発信機や、自治体が貸し出す無料、あるいは安価で契約できる発信機もあります。ほかにも、郵便局や配送会社などが定期的に本人の様子を見に来てくれるサービスもあります」
「見守りサービスにも限界がある」
ただし、一つのサービスだけでは、万が一の時に役に立たないことがある。井上氏が続ける。
「新聞販売店に『郵便受けに新聞が溜まっていたら、迷わず通報してほしい』と頼んでいたにもかかわらず、夏場に孤独死し、数日間発見されなかったケースがあります。配達員が、溜まった新聞を見て『旅行にでも行っているのだろう』と解釈したのです。
見守りサービスは救命を保証せず、限界がある。人や機械など複数のサービスを組み合わせて、どれか一つが機能するよう“網を張る”のがよいでしょう」
ほかにも、単身高齢者向けのシェアハウスに住み替える手もある。『単身高齢者のリアル』を著した追手門学院大学教授の葛西リサ氏が解説する。
「近年では、1階を高齢者に、2階を留学生などの外国人に提供する異世代共生型のシェアハウスが登場しています。水道光熱費込みで家賃が5万~6万円と手頃で、共用スペースが広いためワンルームマンションのような閉塞感もありません。
サービス付き高齢者向け住宅のように高額で自由を制限されることもなく、監視されるような息苦しさもない。若者や留学生との日常的な交流は本人にとって精神的な支えとなり、万が一の際の発見を早めることにもなります」
【後編記事】『「親族が孤独死したせいで」約800万円の損害賠償が発生…!“ここまですれば”ひとりで死んでも大丈夫』へつづく。
「週刊現代」2026年6月8日号より