国会で皇室典範改正についての議論が進んでいる。国民から支持を集める「女性天皇」についての議論は今回の改正では含まれず、麻生太郎自民党副総裁が強固に進める「旧宮家の男系男子の皇族復帰」と「女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持すること」が主な争点となっている。麻生氏の妹は三笠宮信子妃であり、そうした縁戚関係も議論の背後に影響している。
記事前編は【「愛子天皇」の可能性を否定…「旧宮家男系男子の皇族復帰」強力に進める「麻生太郎の思惑」】から。
皇室典範改正に向けた議論の背後にあるもの
麻生氏が親しい、あるいは麻生氏の妹が知っている人々を、正式な国会議論もないまま宮家として迎え入れる……。縁故採用のようなカラクリが今回の、皇室典範改正の構造ではないでしょうか。
一般に上場しているような会社では,人事採用には人事部がまず立ち会い、そして最終的には役員会の採決で採用が決められます。国民の総意でえらばれるべき天皇になりうる家族を、皇族として迎えるにあたって、一般会社でいえば専務クラスのみの会議で選考し、そのまま、役員会(平取締役以上)で決定すれば、旧宮家は皇族として復活。宮家に対しては、高額の皇族費が支払われるようになります。
もちろん、普通の民間会社なら、こんな採用人事はありえません。本人の志望度、人格、能力あらゆる角度で人事部が選び抜いた人が採用人員案として役員会にあげられるのが普通です。
にもかかわらず、最初から結論ありきの男系男子。そして、この二つの議論しかせずに、皇室典範の改正を行えば自動的に悠仁殿下の皇太子が決まるということになります。
支持率90%の愛子天皇を皇太子にしないことは、国民の総意に基づく象徴、という憲法の精神を著しく逸脱しているとしかおもえません。
慎重な議論と調査が必要
まず、愛子天皇、いや女性天皇の可能性について、議論した有識者の会議すら開かれていません。そして、政治的発言ができない天皇陛下や皇族に代わって、お側に仕える宮内庁の幹部や、ご進講などの経験から、皇族の気持ちを推し量れる学者や専門家、そして、普段、警備などで、皇族のお人柄に触れる人間への聞き取り調査といったこともやっていません。
本当に、国民の総意を無視した「お手盛り人事」が行われようとしているのです。私も、天皇の存在と、そして、その継承は国家の大事だと考えています。しかし、今回の衆院選の比例代表の得票は、自民党が36.7%、2102万票でした。有権者数は1億351万人ですから、その5分の1程度の得票で316議席も獲得しています。他の与党をプラスしても、過半数の国民の賛成を得ているとは思えません。その人たちだけで、しかも議論もない議決で象徴天皇を決めるのは、国民の総意を得ているといえるのでしょうか。もっと慎重な調査と、議論が必要であり、1年くらいかけても、今まで20年放置していたことに比べれば、遅い決断でありません。
女帝を認めるべき、としていた三笠宮さま
コラムニスト矢部万紀子氏によると、三笠宮崇仁さまは、「純粋に解釈すれば女帝を認めねばならぬ」と、日本国憲法ができたときから、女性天皇を認めるべきだという文章を30歳のときに書かれていたそうです。
三笠宮崇仁さまは、中国大陸に陸軍の将校として参加していたときも、日本陸軍の対中国政策を批判するなど、冷静な分析のできる人でしたが、「新憲法と皇室典範改正法案要綱(案)」。を枢密院(明治憲法下の天皇の諮問機関)に提出しています。
崇仁殿下は、皇室典範改正に当たっては「現行皇室典範を御破算にして新憲法の精神に忠実に改正する」べきなのに、「現行皇室典範を基礎に、どうしても新憲法の精神に沿わないところだけを変更する」向きが強いと看破し、その上で、「私が皇室典範改正法案中で取り上げたい研究問題の主なもの」として、イからチまで8点をあげています。その「イ」が「女帝の問題」なのです。
崇仁さまの考えを、少しまとめた形でご紹介しましょう。
<問題になるのは女帝を認めないことと新憲法にある「法の下の平等」との関係であらう。純粋に「法の下の平等」を解釈すればどうしても女帝を認めねばならぬ>。戦後すぐに、新憲法をみて、殿下自身がそう考えておられたのです。
三笠宮さまが約80年前に進言されていたこと
それだけではありません。<女性が総理になる時代「再研討せられて然るべき」>と、高市首相の登場も予言していますが、その議論の根拠は、今でも普通の国民に通じるものです。<今や婦人代議士も出るし将来女の大臣が出るのは必定であつて内閣総理大臣にも女子がたまにはなる様な時代になり、一方今後男女共学の教育を受けた女子皇族が母となつて教育された女子皇族の時代になれば女子皇族の個性も男子皇族とだんだん接近して来るであらうからその時代になれば今一応女帝の問題も再研討せられて然るべきかと考へられる>。
皇族みずからが憲法の精神を理解して女性天皇の出現を容認せよと枢密院に進言していたのに、政治家がまだ皇族が理解している憲法と皇室典範の矛盾に気がつかないのは、嘆かわしい限りです。
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