高まる「女性天皇」支持の声
天皇は国民の象徴とされています。日本国憲法の第一条には、「天皇は国民の象徴であり、日本国民の統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」。
とあります。つまり「国民と国のつながりを目にみえる形で表す存在」であり、政治的な権限はもちませんが、国民の幸福や平和を祈る存在として、多くの人が敬意をむける対象ということになります。
見逃してはいけないのは、憲法一条の最後にある、「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」と書いてあることです。
皇室典範改正の議論は、すでに国会ではじまっていますが、高市首相は、愛子天皇の可能性については、きっぱり否定しています。国民の総意に基づくはずの、天皇の存在を、まだ国会の審議も議決もへない段階で、首相一人で「愛子天皇の可能性を否定する」こと自体、愛子天皇を待望する国民が90%を記録している時代では、国民の総意に反することを実行しようとする言動なのです。
争点は「旧宮家男系男子の皇籍復帰」
そして、現在の皇室典範改正の国会審議は、まさに「国民の総意」を無視した形で行われていることを、声を大にして、訴えたいと思います。
愛子さまは、共同通信の調査で90%の支持を得ているほどなので、多くの国民は、民意が反映されると楽観視していると思います。
しかしその意に反して、政治家による「計略」が進んでいると私は思います。発端は、高市首相の後見人とされる自民党の麻生太郎自民党副総裁が、皇族数確保策に関し、旧宮家の男系男子が養子として皇籍に復帰する案の実現を目指す立場を主張し、今国会での実現が絶対の課題と強い意志を示したことにはじまります。今回の皇室典範改正の議論には、愛子さまを皇太子にするか、という問題ははじめから議題にははいっていないのです。
2021年から開催されていた「有識者会議」では、与野党は①女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持、②旧宮家の男系男子の皇籍復帰―の2案について協議していましたが、②案には与野党内からも反対がありました。しかし、麻生氏の発言は①案のみでの先行合意ではなく、どうしても、旧宮家の男系男子が養子として、復帰する案を実現したいという考えです。
この麻生氏の意志と、自民党旧安倍派の支持母体である日本会議の年来の主張である男系男子へのこだわりを、高市総理が実現しようと考えているため、愛子天皇の可能性を否定する国会答弁となったと考えるしかありません。
女性天皇の可能性は議論に含まず
そして、愛子天皇の可能性を議論のテーマから外すため、巧妙な国会対策が計画されています。
まず、今国会での皇室典範の改正に関する手続きは、普通の法案とはまったくちがう形で行われます。皇室のことゆえ、天皇制に懐疑的な共産党以外の全会派の賛成をめざすという名目で、衆参両院の正副議長の四人で議論して、皇室典範の改正案を考え、正副議長の提案である以上、全会派は、実質の議論も調査もせずに賛成するという国会日程が基本構図となっています。議論のテーマは、旧宮家の養子による復活であり、女性天皇の可能性はまったく考慮されていないのです。
衆参両院の正副議長といえば、衆院の森英介議長は麻生派の事務局長。参院の議長は関口昌一氏(自民党)で、野党側からでる衆院副議長は石井啓一氏(中道改革)で参院副議長は福山哲郎氏(立憲)ですが、この四人が皇室に詳しいわけでもありません。衆院議長の森氏など、愛子天皇の支持率が「50%以下というデータもある」という間違った発言までしているほどです。
森氏が50%以下と言ったデータは国民の希望を聞く調査ではなく、国会議員に対するアンケートの結果です。自民党が多数派を占める国会議員なら、そんなデータもでるでしょうが、これこそ、永田町と民意が乖離している証拠であるのに、平気でそれを発言するのは、彼が麻生太郎氏の忠実な部下だからでしょう。
皇族の縁戚である麻生太郎の思惑
麻生氏は、現国会での皇室典範改正に、積極的な自民党のドンですが、彼の妹信子さんは三笠宮寛仁親王の妻として嫁いでいるので、麻生氏は皇族と縁戚という関係にあります。そして信子さんは皇族である以上、旧宮家との交流をふかめる「菊栄親睦会」と呼ばれる任意団体に参加されています。
昭和22年10月の皇籍離脱後も、昭和天皇が旧皇族との交流継続を望み、その場として設けられたとされ、秋篠宮皇嗣同妃両殿下をはじめとする成年皇族、昭和22年に皇族の身分を離れた旧宮家当主系統の方とその配偶者、その後に皇籍を離れた方とその配偶者などが会員となる任意団体です。天皇皇后両陛下や内廷皇族は「名誉会員」、その他の成年皇族や旧宮家当主夫妻などが「会員」とされ、慶事などに合わせて定期的に「大会」が開かれています。また、宮内庁も、この菊栄親睦会の運営をお手伝いしています。
その他にも、霞会館という一般社団法人があり、元は華族の親睦団体ですが、現在は皇族を「名誉会員」とし、旧皇族、公家、大名など華族出身者の子孫が会員となる組織です。つまり、旧宮家が廃止されてからも、皇族との人的ネットワークは存在し、麻生氏は、皇族と縁戚というだけでなく、大久保利通や吉田茂などとも縁戚という「上級国民」であり、彼の旧宮家復活論は、自分の周囲の人間を、皇族に復活させようという計画ともとれるのです。
【つづきを読む】愛子天皇待望論を無視して進む「皇室典範の改正」、約80年前の皇族も「女性天皇容認」を進言していた