前編記事『BCが「中国最大の工業地帯が崖っぷち」と報道…コスト高に薄利多売、苦境の中国製造業に中東紛争が与えた大打撃』で見てきたように、中国経済の見通しは暗い。特に中東紛争の影響が顕著だ。たとえば5月上旬には原材料であるプラスチックの高騰などから、大手玩具工場が相次いで閉鎖するなど問題が起こっている。足元で続く不況も一向に終わりそうにない。
不動産市況はまだ悪い
中国経済不調の元凶である不動産市場も悪い知らせばかりだ。
住宅用不動産に加え、商業用不動産も窮地に追い込まれている。
上海、北京、深圳などの大都市でもオフィスビルの空室率が20%を超え、一部では30%近くに達しており、賃料の大幅ディスカウントも当たり前となっている。
不動産不況は建設業界にも悪影響を及ぼしている。
国有大手「陝西建工集団」の昨年の最終利益は前年比92%減と大幅に落ち込んだ。
不良債権を抱えた金融機関が「貸し渋り」に走るのは世の常だ。
増える「寝そべり」と「ギグワーカー」
中国人民銀行(中央銀行)は4月末、一部の商業銀行に対し、融資拡大を指示した。
人民銀行が異例の措置に踏み切った背景には、不動産危機に起因する信用の急減速への警戒があるのはたしかだ。だが、不良債権問題自体を解決しない限り、信用収縮が止まらないのはかつての日本が証明している。
不況の長期化で最も不利な立場に置かれるのは若者だ。
不満をため込んでいる彼らに対し、中国政府はまたもやトンデモ対応している。
中国でスパイ摘発などを担う国家安全省は4月下旬、「外部の敵対勢力がネット上で中国の若者に組織的な『寝そべり洗脳』の工作を仕掛けている」と注意を呼び掛けた。
「寝そべり」とは過酷な競争社会に勝ち抜くことを諦めた若者を指す言葉だ。
「こうした若者が増えると内需が冷え込む」との中国政府の危機感の表れだろうが、彼らを寝そべりに追い込んだ大元の原因は政策の失敗にある。これほどの責任転嫁はないと言っても過言ではないだろう。
雇用難に悩む若者にとって残された選択肢はギグワーク(特定の企業に雇用されず短期・単発の仕事を請け負う働き方)だ。
中国におけるギグワーカー数は約8400万人に上り、働き手も5人に1人を占めるに至っており、その比率は若年層ほど高い。
集団抗議が起こり…
このような状況下で、中国政府がギグワーカーの動きに警戒を強めていることに筆者は注目している。
ギグワークは「自由な働き方」と評価される一方、仕事の負担が重いにもかかわらず報酬が少ないため、彼らの間で不満が急速に広がっているからだ。
実際に湖南省で、昨年12月に配達員が集団抗議する事案が発生した。
3月から4月にかけての報酬の引き下げの流れも、火に油を注いだ。抗議活動が中国各地で発生したため、事態が深刻化することを恐れた中国政府が4月下旬にギグワーカーに対する管理方針を示したのだ。
だが、「ギグワーカーたちはネットでつながり、発信力が高いため、彼らの怒りが中国社会の政情を揺るがす火種になる可能性がある」と専門家は警告を発している。
日本でほとんど報道されなくなったが、中国での社会報復事件(無差別殺傷事件)も後を絶たない。「中国社会の不満は臨界点に達しつつあるのではないか」との不安が頭をよぎる。
日本にとって厄介な存在となった隣国の動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。
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