海ごみアート、デザインの力で広げる林業と福祉の可能性、新発想のごみ回収機器、植栽による森林再生、滞在することが木育になる森林リゾート………。日本から世界へ広げる「生物多様性への取り組み」をご紹介!
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#1 ごみ拾いを競技化、国産材サウナ、未利用魚を食卓へ…日本から世界へ広げる「生物多様性への取り組み」
#2 地域の木材を活用した「豊かな木の空間づくり」で子供たちへの木育も!日本から世界へ広げる「生物多様性への取り組み」
#3 絶滅危惧種シマフクロウの生息地保全、最新技術で海中を可視化も!日本から世界へ広げる「生物多様性への取り組み」
#4 浮体式の洋上風力発電、建設廃棄物のアップサイクルも!日本から世界へ広げる「生物多様性への取り組み」
#5 専門用語も学べる“林業ボードゲーム”、オフグリッドの宿も!日本から世界へ広げる「生物多様性への取り組み」
29.Art from Waste海ごみをアートに。対馬から生まれる新しい循環
長崎県対馬市は、九州と韓国の間に位置する島。地形や海流の影響で、漂着ごみが集中し年間で約3万~4万m3もの量が海岸に打ち上げられている。ごみの回収・処理にも莫大なコストがかかるが、すべては回収しきれていない。
この深刻な現状を前に、対馬市では海ごみをアートにして可視化し、作品展示を通じて人々の関心を高める「Ocean Good Art」を開始。作品の販売収益を海ごみ回収の財源に充てる。第1弾として参加した廃材アーティストのしばたみなみさんは、1ヵ月半にわたり対馬に滞在。島の海岸を歩きながら拾い集めた漂着物を素材に、現地で感じたことを作品に込めた。
現在、このプロジェクトはクラウドファンディング型ふるさと納税「ガバメントクラウドファンディング」で支援を募集中(2026年1月12日まで)。返礼品には、海洋プラスチックを使用したアクセサリーや時計を用意している。アートには、人の心を動かし、社会を変える力がある。アートを人と社会と自然をつなぎ直す媒介として、この問題に新たな光を当てている。
Ocean Good Art
oceangood.art
30.Forestry and Welfare林業と福祉の可能性をデザインの力で広げていく
「林福連携」とは、障がいのある人たちが林業分野で働くことを通じ、社会参画を実現していく取り組みのこと。日本各地で試みが広がっており、林福協業プロジェクト「ドキュ」は、2022年に愛媛県の久万高原を拠点に活動をスタートさせた。
「ドキュ」が掲げるのは、地域の森林資源を無理なく循環させながら、木のプロダクトを通じて人と森をつなぐこと。パートナーは、地域で150年に渡り林業を営む「久万造林」と、障がいのある人たちが木工を手がける多機能型事業所「うさぎ堂」だ。双方と協力しながら、福祉の現場におけるモノづくりの可能性を、プロダクトデザインの力によって広げている。
「ドキュ」の現場には、さまざまな障がいのある人が、個々の能力を活かしながら働けるような工夫がなされている。例えば、作業に用いる機械は、操作が比較的容易なNCルーターなどのデジタル加工機を採用。製品の組み立てや仕上げの他、再利用の段ボールパッケージを準備する工程など、仕事を細分化して関われる人を増やしている。
デザイナーも現場を訪れ、使う人とつくる人のそれぞれの視点からプロダクトを設計。手仕事の個性が生きるデザインを考案し、例えば木製玩具「Alive」は、手作業で研磨することで、ひとつひとつ異なる表情が生まれ、それが工業製品にはない温もりある佇まいになっている。「自分の手でつくった」という実感は、働くことへの意欲となる。それはやがて誇りや生きがいにもつながっていく。
「ドキュ」というプロジェクト名は「ドキュメント(記録)」に由来している。木の生きた時間や手仕事の痕跡、その土地の多様な営みを、ひとつひとつのプロダクトに残していきたいという思いが込められている。
DOCU
docu.jp
CIRCULATION
海と森の環境は密接に結びついている。なぜなら、雨は森の土壌に染み込んだ後、川へと辿り着き、やがて海へ流れ込むから。森林の土壌が豊かならば、水は適切に濾過され、栄養分や有機物を取り込んでいく。それが海の生態系の貴重な栄養源となる。
日本には「魚つき保安林」という独自の保安林があり、海岸や湖岸、川沿いの森林などが、魚の繁殖や保護を目的に守られている。その広さは全国でおよそ6万ha。なぜ水辺の森林が大切なのかというと、魚類や海藻、プランクトンといった海の生物の約7割が沿岸域に生息しているから。特に海藻やプランクトンの成長には窒素とリンが必要で、これらの栄養分を取り込む際に機能するのがフルボ酸鉄。フルボ酸鉄は森から届く水に含まれている。“豊かな森林は、豊かな海を育む”。かつての日本人が持っていたこの感覚を、現代人が取り戻すことも極めて重要となる。
31.Marine Debris Collection Technology海に流れる前にキャッチ! 新発想のごみ回収機器
海に流れ出たごみを回収するのは困難。そこで「SUSTAINABLE JAPAN」が考えたのは“陸のごみは陸で回収する”こと。ごみが海へ流れ出る前の通り道である用排水路での回収こそが効果的な対策であると考え、用排水路を流れるごみを回収する機器「SEETHLIVER(シースリバー)」を開発。2023年から製造・販売・リースを開始した。
限られたスペースや水位変動の激しい水路にも対応できる設計で、さまざまな場所への設置が可能。水路内で効率的にごみを収集・除去できる構造となっている。また、水稲栽培などで使用される被覆肥料の膜はプラスチック製で、その一部が用排水路から海へと到達。SEETHLIVERを用排水路に設置することで、生活ごみとともにこの膜も同時に回収が可能になる。
SUSTAINABLE JAPAN
www.sustainablejapan.org
32.Reforestation Activities企業と地域が協力して進める、植栽による森林再生
明治グループは、2023年に岐阜県などと「森林づくり協定」を結び、関市武芸川地区にある15haの土地で森林保全活動をスタートさせた。森の名前は「きのこの山・たけのこの里の森~明治グループ自然保全区~」。
ジンダイサクラやコナラなどを植栽し、下刈りや歩道の整備なども行いながら、森林が雨水を貯留する機能(水源涵養機能)の維持・向上や水資源の確保を目指す。また、こうした植栽活動は、森の地盤を強くする効果があり、豪雨などによる土砂災害も起こりにくくなる。さらに動物や昆虫が自然と集まる環境づくりにもつながり、森の生物多様性にもポジティブな影響を与えることができる。
保全活動には明治グループの社員も参加。地域の森林組合の指導の下、苗木を植えたり、添え木を打ち込んだりと、ともに手を動かして森づくりを行っている。協定期間は2028年3月まで。企業と地域による森の環境改善が進む。
明治ホールディングス
www.meiji.com/sustainability/harmony/water_resources/
33.A Hotel Richly Crafted from Local Timber滞在することが木育になる森林リゾート
長野県の蓼科高原に広がる深い森。その森に抱かれるようにして佇む「TENOHA蓼科」は、“環境共生”をテーマに、地域との連携や環境に配慮した取り組みを行い、その活動を発信する拠点だ。ラウンジやエントランスには、この地域の間伐材・蓼カラマツがふんだんに使われ、訪れる人をやさしく迎え入れる。
間伐材は内装だけでなく、ワークショップにも活用されている。新たに「TENOHA蓼科Lab.」が設置され、木育プログラムを多数企画。草木染めや精油蒸留、巣箱作りなどを通して、森の恵みと循環の仕組みを学ぶことができる。
「TENOHA蓼科」がある東急リゾートタウン蓼科では、2017年から「森をまもる、森をつかう、森をつなぐ」を理念に、独自のサステナブル活動「もりぐらし」が進められている。約660haの広大な森林は、定期的に間伐を行うことで健全な森林環境が整えられており、その過程で生まれた間伐材を家具や建材の他、香りを生かしたアロマ製品や木質バイオマスボイラーの燃料として活用。植林も毎年継続されており、水土保全にも貢献する。地域全体で取り組む森を守る活動を、滞在しながら知ることができる。
TENOHA 蓼科
www.tateshina-tokyu.com/tenoha/
Illustration:Aki Hirano Text:Saki Miyahara , Yuka Uchida Edit:Yuka Uchida
地球環境と温暖化のこと、もっと大きな声で話し合って、いいみたい。
世界の89%が、私たちの味方です。
2024年、地球平均気温の上昇幅が産業革命以前と比較して1.55℃を越えてしまいました※1。なのに、政治や大企業による対策が十分に機能しているとは言えないのが世界の実情です。
※1 世界気象機関(WMO)が分析し、2025年1月10日に発表した結果。日本の気象庁を含む6つの国際的なデータセットのうち4つが、昨年全体で世界の平均気温の上昇が1.5℃を上回ったことを示した(残り2つは違う結果だった)。
そんななか、イギリスの科学誌「ネイチャー クライメイト チェンジ」が、気候変動に対して『世界人口の69%が(その解決のために)個人所得の1%を拠出する意思を示し、86%が気候変動に配慮した社会規範を支持し、89%が政治的行動の強化を求めている』ことを発表しました※2。日本でも86%が政治的行動の強化を求めている、というデータも提示されています。
※2 125カ国を対象に調査を実施し、約13万人にインタビューを行った結果。上図は「政治的行動の強化を求めるか」の質問に対する回答結果(左)と国ごとの割合(右)
大多数が支持しているから正しいなどということはありません。ただ、(その声の主がたとえ大国の元首であったとしても)少数派の大きな声ばかりが目立つのも健全ではない。ひとつだけはっきりしていることは、サイレント・マジョリティ(静かなる多数派)と言われている私たちがちゃんと気持ちを表現すれば、政治や、もっと多くの企業を変えることができるにちがいないということ。
「大地は、先祖から譲り受けたものではなく我々の子孫から借りているのだ」、これはナバホ族の格言です。また、イコロイ族には「どんなことも7世代先まで考えて決めなければならない」という格言もあります。
美しい地球を美しいまま子孫に返すために、私たちには、「ちゃんと声を上げる」という多数派の責任があるとFRaUは考えています。
地球温暖化を止めるための発信の取り組み「89%プロジェクト」は、個人でも参加できます。SNSなどに#The89Percentをつけて投稿してください。
この記事は、世界的な報道連携「Covering Climate Now」(CCNow)による「89%プロジェクト」の一環です。FRaUはCCNowに賛同しています。
●情報は、『FRaU SDGs MOOK 森と海が教えてくれる、気持ちのいい暮らし』発売時点のものです(2025年12月)。
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このプロジェクトの会員の皆さまには、SDGsにまつわるさまざまな情報、今後開催予定のイベント告知、FRaU誌面やFRaUwebの企画参加のご案内などをお送りしています。FRaU主催のイベントに優先的にご参加いただくことができたり、サステナブルグッズの会員限定プレゼント企画に応募できたり、さまざまな特典もご用意。
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