一時期盛り上がりを見せていた『相席屋』だが、店舗数は全盛期から9割以上減り、今では7店舗(2026年2月時点)へと沈静化してしまった。
しかし実は、相席飲食業界が衰退しているわけではない。クラウドエヌが運営する『オリエンタルラウンジ』と、その系列店『ag(アグ)』はいまだに突出して人気を集めている。
では、実際に店舗を訪れる女性客は、どのような動機で来るのか?
それをを探るため、前の記事『マチアプはメッセージも1対1も面倒…「相席ラウンジ」に9年通い続ける会社員女性の本音から見えてくる「出会いの変化」』に引き続き、『オリエンタルラウンジ』と『ag』に潜入して利用者の女性たちに話を聞いた。
(なお、我々が「話を聞きたい」という目的で同席することを、女性サイド(名前はすべて仮名)に了承を得ている)
マチアプ、合コンより「楽しい」が担保されている
次に、私たちが話を聞いたのは、どこかギャル感を感じさせるアラサーの二人組だった。「私はなっちゃんでーす! こっちはももちゃん! 取材ってキンチョウするんだけど」。なるほど。ソラさんが言うように、男女ともにさまざまなレイヤーがいるからこそ、『オリエンタルラウンジ』は盛り上がるのだろう。
彼女たちのノリについていけるか少しばかり不安を覚えたが、いざ話を聞くと、思いのほか二人は真剣に語り出した。美容業界で働いているというなっちゃんが話す。
「私の職場は、ほぼ女性しかいないから、そもそも男性との接点がない。ここに来るとたくさんの男性と接点を持てるから、『この人ってこういう人だろうなぁ』とか大体分かってくるんですよ。ほら、何て言うんだっけ、目が肥える的な」
「審美眼?」と私が振ると、「それそれ! なんか頭イイ!」とすかさず彼女が合の手を入れる。楽しい。取材だけど。
「審美眼! 審美眼! それが養われる。そういう意味でも、やっぱり効率が良いんですよ」
なっちゃんは、2年ほど前、会社の後輩に誘われる形で相席飲食店に足を運んだのが最初だという。思いのほか楽しく、大学時代の友人であるももちゃんにそのことを伝えると、「私もよく行く! じゃあ、一緒に行く?」と意気投合。以来、週末を中心に月2~4回のペースで通っているそうだ。隣で頷いていた、事務職をしているというももちゃんが続ける。
「私は5年くらい前に初めて来たのかな。その後、行かない時期があったんですけど、暇な時間ができて再開しました。一人だと行きづらいけど、2人組が前提だから、誘いやすいし、誘われやすいというのもあると思う。それに、女子2人で飲みに行っている時点で、どんな男性が来ようがすでに楽しい。
それが保証されているのが大きい。逆に言うと、一緒に行った友だちに気を遣っちゃうところがあるから、1対1で話が分かれたとき、友だちが盛り上がってないとこっちも盛り上がれないっていうのはありますね」
合コン特有のジレンマこそ生じるが、それでも‟即席”だからこそのメリットも多いと話す。
「例えば、マッチングアプリだとみんな構えるじゃないですか。会うにしても、なんかその日だけの特別モードになるっていうか。だから、会ったところで本当にその男性の人間性とかクセとかが分からない。
だけど、ここは男性も友だちや同僚と来ているから、普段の雰囲気が分かる。例えば、コップをドンッ!って置く人だったら、私は『合わない』って引いちゃう(笑)。そういう普段の態度が分かるって助かりません? 仮に仲良くなって会うようになったとき、ズレが少なさそうじゃないですか」(ももちゃん)
「女性は無料でいいね」はNGワード?
実際、 ももちゃんはここで知り合った男性と付き合ったことがあるとも話す。ただし、それはあくまで結果論であって、「単純にチームで飲めるのが面白い」から足を運ぶという。 なっちゃんが同調する。
「この前なんか、日本人なのにずっと私たちに英語で質問する男性と一緒になって。『こいつヤベーな』と思いながらも私たちもノッて、ずっと知ってる単語だけで返した(笑)。マッチングアプリとか普通の合コンだったらありえないでしょ!? だけど、そういうわけわからないパターンも、こういう場所だからアリになる。それが楽しい」(なっちゃん)
もちろんそれは、女性が無料だからという大前提があるからだろう。しかし、なっちゃんは語気を強めてこう話す。
「よく男性から『女性は無料でいいね』みたいに言われるんだけど、それを言われた時点でナシ! チェンジ! いろんな事情があるってことを想像した方がいい。それに、こういう場所に来る男性=それなりにお金を持っているって映るから、一つの安心材料になる。『無料でいいよね』って言う男性は、お金ないのかなって疑っちゃう(笑)。だから、こういう場所では言わない方がいい」(なっちゃん)
言わない方がいいそうです。女性と楽しく話すために男性が‟知っておいた方がいいルール”はまだあるらしく、なっちゃんが水を得た魚のように話す。
「あと、私たちが頼んだフードを『食べていい?』って聞いてくるのもイヤ。私たちは無料だけど、‟私たちが頼んだもの”なので、自分たちが食べたいんだったら自分たちであらためて頼んでくださいって思う。それをされたらチェンジですね」(なっちゃん)
「ムズすぎんだろ」。内心、私はそう思った。禁断のフレーズだろう「こっちが払っているのに?」が喉まで出かけたが、目の前のウーロン茶を流し込んで、腹の中に押し戻した。そして、私はもっともらしく深く頷いた。理解しているフリをしたのだ。申し訳ない。
「チェンジしたタイミングで男性がいなくなった後は、だいたい2人で反省会じゃないけど、『さっきの男性、私にはきつかった』みたいなことを話し合う。『ももちゃん、めっちゃ顔に出てたよ!』みたいにアドバイスを言うこともあるので、次の男性たちが来るまで答え合わせや作戦会議ができる。そこまでを含めて‟楽しい飲みの場”って感じ。それって男性も同じだと思うですけど、男女がそうやって飲める場所ってなくないですか?」(なっちゃん)
二人は、「面白い」「いいな」と思ったら、男性陣とともに2軒目に行くことも少なくないという。今日はお眼鏡にかなう人がいなかったこともあり、この後、系列店である『ag UENO』に行くという。‟相席はじご”をするというのである。『ag』は、『オリエンタルラウンジ』よりも利用客の年齢層が低く、主に20代を中心に賑わっている。30代以上もよく来店する『オリエンタルラウンジ』と棲み分けがされている。
「じゃ、私たちは『ag』に行くんで! お兄さんたちも頑張ってください!」
いろんな出会いを楽しんでいる――その言葉には偽りがなさそうだった。
「社会勉強としてやってきた」(現役大学生)
最後に我々が話を聞かせてもらった女性は、現役の大学生2人組だ。聞けば、「今日、はじめてこういうお店に来た」といい、「こんなオシャレな感じだと思わなかったからソワソワする」と面映ゆそうに笑う。入店してまだ20分ほどしか経っていないため、まだ男性とは相席していないらしい。試合を待つ選手の控え室に立ち入るようなものである。申し訳なさを感じつつ、まず話し好きな印象を受けたリンナさんに、どうして『オリエンタルラウンジ』に来ようと思ったのか? その理由を聞いてみた。
「相席ラウンジの存在は前から知っていたんですけど、彼氏がいたのでそういう場所に行くことに抵抗があったんです。だけど、彼の浮気が原因で、つい最近別れちゃって」(リンナさん)
その話を聞いていたもう一人の女性、リンさんが、「実は私も同じで別れたばかり」とぽつりとこぼす。
「二人ともフリーになったから、社会勉強じゃないけど、『今しかできないことをしよう!』って。それで今日来たんです」(リンナさん)
そういう理由もあるのかと、私は死角から放たれた言葉にたじろいだ。この後、この席に来るだろう男性たちは、失恋したばかりの彼女たちにどんな言葉をかけるのだろうか。ももちゃんが言っていたように、その言葉の掛け方一つで、たしかに人間性が分かりそうなものである。言葉を探していた私は、「いろいろな男性が次から次に来ることに怖さみたいなものない?」と続けて尋ねてみた。
「地元の飲み屋に来る人は同じ顔ばかりだし、大学で会う男子も新鮮味がないから、ドキドキするけど楽しみの方が勝ってます(笑)。あと、自分たちの話を聞いてくれる人がいてほしいなって思っていて。
大学や飲み屋だと、男の人も自分の話ばかりする。女の子って自分の話をしたいじゃないですか。それを聞いてほしいって気持ちがあるから、こういうお店に来る人たちがどんなリアクションをするのかっていうのはめっちゃ楽しみ」(リンナさん)
「相席した人と相性がよくなかったら、すぐに変えられるからリスクもないじゃないですか。そういう意味では安心。それに、よほど「合うな」と思わない限り、付き合うこともないだろうなって。一旦しばらくは恋愛はいいかなと思ってます。
それって、変な遊びをしたいとかじゃなくて、彼氏に気を遣うようなことを続けていたから、気を遣わなくていいことをしたいって意味です。自分ファーストで動けるときしか、こういうお店に来れないと思うから」(リンさん)
想像していた以上に、女性たちは意思を持って相席ラウンジにやってくる。もちろん、中には難しいことを考えずに来店する女性もいるだろう。しかし、少なくても今日話を聞いた3組は、明確な動機を持っていることが分かるはずだ。「水は川下に流れる」ではないが、人間が合理的な考えを選ぶという流れが不可逆であるとするならば、出会い方に効率を求めることは止められない。
一方で、「いろいろな人と会ってみたい」と異口同音に口にしていた彼女たちを見ると、出会い方さえ合理的であれば、出会った後は必ずしもそうとは限らないことを予感させた。出会い方の難易度を下げたい――。それを叶えているからこそ、多様な男女が毎夜集っている。
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