3月11日、高市早苗総理は福島県主催の東日本大震災追悼復興祈念式に参列し、犠牲となった人々へ追悼の辞を述べていた。震災発生から15年。復興は今なお道半ばであり、被災者の悲しみも完全に癒えたとは言えない。犠牲者を追悼するもっとも大切な一日だ。
しかし、その日の夜、現職の副大臣が密かに資金集めを目的とした政治資金パーティーを開いていた。内閣府副大臣兼デジタル副大臣の今枝宗一郎衆議院議員だ。
「震災の日」に250人規模のパーティーを開催
今枝氏は元医師で、’12年末の総選挙で初当選し現在6期目。’17年の安倍内閣では当時史上最年少となる33歳で財務政務官に抜擢されるなど、若手有望株として早くから注目されてきた。昨年10月に発足した高市内閣でも、内閣府副大臣兼デジタル副大臣に任命され、若手改革派の一人と目されている。
本誌は、その今枝氏が3月11日夜、名古屋市内で開催した政治資金パーティーの招待状を入手した。「内閣府副大臣・デジタル副大臣衆議院議員 今枝宗一郎君を励ます会」と題され、ゲストには自民党総務会長の有村治子参議院議員の名前もある。パーティー会費は2万円である。
招待状には2月5日開催と記されているが、2月8日に衆議院総選挙が行われたため、3月11日に延期されている。そのため会場も当初の場所から変更されている。
当日会場となったのは名古屋市内にあるホテルメルパルク名古屋。宴会場は約250人規模で、医療団体、企業団体、公職者、来賓ごとに受付が設けられていた。総務会長の出席もあって、愛知県警のSPも数人配置されていた。
開催時間が近づくと、今枝氏を支援する医師会や医療関係者、企業関係者、自民党の県議や市議らが次々と来場。受付を済ませると会場へ入っていく。出入り口には今枝氏本人が立ち、訪れた支援者に笑顔で挨拶をしながら迎え入れていた。
「パーティー券を売りまくっていた」
パーティーは2部制で行われた。第1部は講演会、第2部は懇親会という構成で、全体で約2時間に及んだ。出席者の一人は当日の様子をこう振り返る。
「250人くらいは集まったんじゃないですかね。有村さんは講演会終了後に退席されましたが、今枝さんは2部の懇親会でも1人1人挨拶に回られていて、いつも通りの賑やかな懇親会でした」
3月11日だからといって特別な配慮が感じられる様子はなく、普段の政治資金パーティーと変わらない雰囲気だったという。
もう一つ気になる点がある。今枝氏の地元選挙区は愛知14区、豊川市や蒲郡市などがある愛知県東部だ。それにもかかわらず、パーティーは名古屋市内で開催されている。いったいなぜなのか…。
今枝事務所の関係者はこう明かす。
「彼は元医師ですから、医師連盟から多額の寄付を受けています。でも、実はそれだけではありません。2年前の総選挙で愛知県選出の自民党議員が大勢落選した後に、彼は名古屋の企業回りをして、落選している議員の代わりに要望は全部処理するからと言って、パーティー券を売りまくっていたんです。
今枝さんの選挙区は愛知県の端で大手企業も少ない。名古屋市内のほうがいろんな職種の大企業が多いでしょう。落選した候補の選挙区の企業に声掛けして、相当な枚数を売っていました。事務所の運営費も以前は年間4000万円から5000万円くらいでしたが、今は1億円くらい集めていると聞きます。一時期、名古屋市内にも事務所を作るという噂があったほどです」
実際、今枝氏の政党支部の政治資金収支報告書を見ると、政治資金パーティー収入は’23年で1878万円、’24年で約2500万円に達している。若手議員としては異例の資金力と言える。
しかし、今回のパーティーは問題も指摘されている。大臣規範との関係だ。
パーティー終了後、今枝氏を直撃すると…
これまで政府は、政務三役の政治資金パーティーについて大規模なものに限って自粛を求めてきた。しかし昨年12月、片山さつき財務大臣の在任中に開かれた政治資金パーティーを巡る問題が国会で批判を浴びたことから、今年1月20日の閣議で大臣規範が改正された。閣僚、副大臣、政務官は在任中、規模にかかわらず政治資金パーティーを自粛することが決められたのである。ただし就任前に対価の支払いが行なわれたものについては対象外とされている。
だが本誌が入手した招待状の日付は「12月吉日」となっている。当時、すでに今枝氏は副大臣に就任しているのだ。
懇親会終了後、今枝氏本人に直接話を聞いた。
―大臣規範では副大臣在任中は政治資金パーティーを開催は自粛することに決まっているが。
今枝氏「(副大臣就任前)それより前に告知していたものは良しとされています」
―デジタル副大臣の就任前に告知していたということですか?
今枝氏「そうです。前の文部科学副大臣の後から(デジタル副大臣就任の間まで)空いているので」
―本誌が入手した招待状は12月吉日で支援者に発送されていますが。
今枝氏「(5秒ほど無言が続き)僕もちょっと時間がないので。あとは事務所に連絡してください」
―中止という選択肢はなかったのか。
今枝氏「検討はしました。政府に確認をしたらOKということだったので開催した」
翌日、今枝事務所に質問状を送ると、大臣規範の附則にある「この閣議決定による改正後の規定は、施行日前に対価の支払いが行なわれたものについては適用しない」という規定をもとに、問題ないと判断したとの回答が寄せられた。
総務会長の有村氏からも、今枝氏と同様の回答があった。
しかし招待状には〈お申し込み・ご入金は令和8年1月26日まで〉とある。施行日をまたぐ形になっているのだ。
大臣規範に記されていた「抜け穴」
たしかに、1月20日の閣議で決定された大臣規範には、末尾の附則に「改正後の規定は、施行日前に対価の支払いが行なわれたものについては適用しない」と明記されている。
しかし、当時の官房長官会見ではこの例外規定に触れられず、各メディアも「在任中のパーティー自粛」という表面的なルールのみを報じていた。
最初から「既に入金済みのものはすべて対象外」と公表していれば済む話であり、このような「後出しの免責条項」を用意するやり方は、国民への説明と実態が乖離しているとの批判を免れないだろう。
政治資金問題に詳しい上脇博之神戸学院大学教授はこう指摘する。
「政府側は『既に準備が進み、入金もあるパーティについて、遡及してルールを適用するのは無理がある』という理屈なのでしょう。要は過去の分は不問にするという趣旨です。しかし、政治資金パーティーが裏金作りの温床となってきた実態を考えれば、施行前であっても例外なく中止すべきでした。
これまで政治資金パーティーは国民の疑念を招き続けてきました。実際に裏金作りが刑事事件として立件されている以上、政治資金パーティーの仕組みそのものに欠陥があるのは明白です」
自民党の中堅議員もこう語る。
「大臣規範が改正されてから、計画していた政治資金パーティーを中止した政務官も複数います。私も過去に事情があって政治資金パーティーを断念したことがありますが、返金処理は2週間ほどで終わりました。1ヵ月もあれば十分に中止できますよ。他の議員が自粛する中で、副大臣が強行するのはいかがなものでしょうか。
ましてや今は予算審議の正念場。そんな時期に己の資金集めに走るのは、倫理的に到底受け入れられません。そもそも、3.11という日に政治資金パーティーを開くなど、国会議員としての感性を疑います」
たとえ形式上のルールに抵触せずとも、その政治倫理の欠如は国民の目にどう映るだろうか。
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