それまで病気とは無縁だった美川さんを難病が襲った。だが、一切挫けることなく、元気に多くのファンを魅了する。その秘訣とは?
美川憲一(みかわ・けんいち)/’46年、長野県生まれ。歌手。代表曲に『柳ヶ瀬ブルース』『さそり座の女』など。インスタグラムやブログにて精力的に近況を発信中
コロッケ(ころっけ)/’60年、熊本県生まれ。ものまねタレント。ものまねのレパートリーは500人以上。美川とは35年以上も、全国各地でジョイントコンサートを続ける
病など忘れたかのように歌い始めた
コロッケ:毎年一緒に歌っているジョイントコンサートでは、いつも通り元気だった美川さんが、昨年11月、パーキンソン病を突然公表されたときはビックリしました。
美川:私、8月に意識を失ってロサンゼルスの自宅の台所で倒れたのよ。数秒後に気づいたら、膝が内出血で真っ黒。それで病院に行ったら洞不全症候群(不整脈の一種)と診断されて、心臓にペースメーカーを埋め込む手術をすることになったの。手術自体は無事に終えたけれど、この際だからと、悪いところがないか徹底的に調べてもらったところ、お医者さんが「パーキンソン病です」って。
コロッケ:65歳以上では100人に1人が発症すると言われ、根本的な完治治療が確立していない難病ですよね。初期症状では筋肉がこわばったり、手足が震えたりすると聞きますが、僕は見ていて全く気づきませんでした。
美川:周囲も本人も気づかないケースは多くて、ただの老化と思ったまま亡くなる方もいると、先生がおっしゃっていました。でも思い返せば、私にも異変はあったのよ。2年ほど前から、足が思うように前に出なくて、引きずるようになっていた。今年80歳を迎えるんだし、そういうものかなと見過ごしてきたのよね。
コロッケ:いずれ寝たきりになるかもしれないといわれた難病です。気落ちされていないかと、心痛めておりました。
美川:私、弱音を吐く性格じゃないんだけど、入院中には落ち込んだわ。「このまま退院できずに、歌も人生も終わってしまうのかな」って。ほとんど誰とも会えないし、ベッドから見えるのは白い壁と天井。どうしても悪いことばかり考えちゃう。
コロッケ:それでも、手術からわずか3ヵ月でのスピード復帰です。この早さには舌を巻きました。12月の美川さんと僕のディナーショーで復帰したわけですが、そこでまた驚かされましたよ。
楽屋ではふらつくこともあったし、ステージ裏までは車椅子で移動していたので、ステージ上で何かあったら僕が支えようと身構えていました。昨年2月に、変形性膝関節症(膝関節の軟骨がすり減り、痛みと変形を起こす病気)を患って両膝に人工関節を入れる大手術をしたとき、美川さんにしっかり支えていただきましたから。ところが、いざ曲が流れると、病など忘れたかのように、力強く歌い始めましたよね。
K-1に出るおつもりですか?
美川:悪いことばかり考えていると、もっと弱ってしまう。そんな自分がイヤだったから「強く! 強く!」と言い聞かせて、弱い心をキッとにらみつけて、気持ちをすっかり切り替えたわ。人生は後戻りできない。だったら覚悟を決めて、前進しようと思っただけよ。
コロッケ:それがなかなかできないから、人生はままならないんですけどね……。
今はまだ特効薬こそなくても、病の進行を和らげる良い薬もあるそうですね。
美川:脳の神経伝達物質のドーパミンが不足する病なので、気が滅入ってうつ病にもなりやすいそうなんだけど、主治医からは「ドーパミンを補える薬があるから安心して。行動は制限しないで、好きなように生活してよいです。でもストレッチや筋トレなどのリハビリは続けてくださいね」と、フランクに言われたわ。
コロッケ:それで、ジムにも積極的に通っているんですね。腕をクロスさせながら胸に当ててスクワットを15回しているインスタの動画を拝見しましたが、普通の人でも相当きつい運動ですよ。
美川:それ以外にも、足首に5kgのダンベルを吊るして後ろに引き上げたり、両膝をゴムチューブで結んで脚を外側に開く筋トレを30回。1時間の筋トレを週に2回、みっちりしているわ。
コロッケ:え……、K-1に出るおつもりなんですか?
美川:太ももがカッチカチになったわよ(笑)。トレーナーに毎回、ひっくり返るような姿勢もとらされるんだから(椅子に浅く座ったまま、両脚を大きく開いて、宙に上げて見せる)。
コロッケ:それは大変です。美川さんらしからぬ、すごい恰好になっています。僕でもそんなハードな筋トレは、したことないですよ。
美川:もともと私は運動が大嫌いなのよ。でも、病気の進行を食い止めるには必要なことでしょ? それに、入院して体重が10kgも落ちたから、戻さなくちゃいけない。だから、塩分の摂りすぎに注意しながらステーキとかカニとか好きなものをたくさん食べて、毎日8時間以上眠りながら体力をつけていくわよ。
後編記事『今年80歳の美川憲一「食欲と物欲」が止まらない…「貝殻まで食べてしまうこともある」と明かす』へ続く
「週刊現代」2026年3月16日号より