東京五輪の選手村跡地を活用した超大型レジデンス「晴海フラッグ」。割安な価格と空前の高倍率が話題を呼んだが、実際に購入した住民は、周囲の視線を気にしながら毎日を過ごしているという…。前編記事『「品川ナンバー以外は通報」「騒いでる子供を晒し上げ」…晴海フラッグで深刻化する「相互監視社会」のヤバすぎる実態』より続く。
中国人住民を敵視する投稿が急増
2月8日には、そんな状況にさらに拍車をかける事件も起きた。中国籍の男性が運転するランボルギーニが停車中のパトカーに衝突し、警察官2人を負傷させたまま逃走。報道で公開された車のナンバーが、以前から晴海フラッグ近隣で迷惑駐車を繰り返していたとされる車と一致していたことが判明し、住民の間に衝撃が走った。
在日中国人の男性住民が語る。
「晴海フラッグは中央区なので、ふだんは品川ナンバーの車が出入りします。だから、見慣れない他地域のナンバーを見つけると、すぐに写真を撮られてオープンチャットに晒され、『中国人の白タクだ』と決めつけられてしまう。
ここに住む中国人のほとんどはルールを守って生活していますし、最近はコミュニティ内で互いに注意し合うようになって、違法な民泊利用も随分と減ってきた。それでも、風当たりはいっこうに和らぎません。
春節の季節に部屋の窓から中国風の飾りつけが見えただけで、写真を撮って晒す人までいます」
共用部も駐車場も学校もパンク状態
こうした住民同士の相互監視は、晴海フラッグが抱える構造的な問題と深いかかわりがある。
晴海フラッグは分譲3街区(シービレッジ・サンビレッジ・パークビレッジ)と賃貸1街区(ポートビレッジ)の計4つの区画で構成されている。それぞれ管理会社が異なり、共用施設の利用ルールも微妙に違う。
パーティールームやゲストルームといった豪華な共用施設は全街区の住民が利用できるものの、戸数に対してその数があまりにも少ないのが実情だ。住居用の部屋はサンビレッジだけで約1800戸あるにもかかわらず、ゲストルームはわずか5つしかない。
前出の中国人男性は不満を吐露する。
「利用するためには予約が必要なのですが、常に申し込みが殺到していて、休日だと抽選倍率が100倍を超える日もあります。せっかく立派な施設があるのに、実際にはほとんど使えない」
晴海フラッグは最寄りの勝どき駅まで徒歩20分近くかかるため、車を所有している住民が多い。しかし、駐車場の設置率は総戸数に対しわずか45%にとどまる。
シービレッジでは現在270人以上が空きを待ち続けているが、1ヵ月に空きが出るのはわずか1〜2台程度だ。最後尾の住民に至っては、10年以上待たなければならない計算である。車に対する異常な取り締まりは、こうした駐車場不足への不満も要因となっているのだろう。
「マンションと駅をつなぐバスはあるにはあるのですが、本数が少なくて、昼間は1時間に4〜5本程度。しかも最終が22時台と早いので、車がない人は遅くなるとタクシーを使わざるを得ず、毎回高いお金がかかってしまいます。
子供を持つ人にとってさらに深刻なのは学校に空きがないということです。当初の想定をはるかに超える子供が集まっていて、すぐ近くの小学校はパンク状態。保育園も近隣には入れず、毎日勝どきや月島まで送り迎えしている親御さんも少なくありません」(別の住民)
資産価値まで落ちかねない
大枚をはたいて手に入れた「夢のタワマン」は、思っていたより問題が多かった。だがそれでも、資産価値さえ上がり続けているなら―そう思って暮らしている住民も多いだろう。しかし、そんな最後の拠り所すら、静かに崩れ始めているという。
タワーマンションに詳しい住宅ジャーナリストの榊淳司氏が解説する。
「晴海フラッグの中古市場での売り出し価格は、新築分譲時の約2倍という水準にまで膨れ上がっています。
しかし、不動産流通の指標となるレインズのデータによれば、’26年1月以降、売りに出される物件は週を追うごとに増え続け、2月時点では276件に達しています。一方で成約件数は101件まで落ち込んでいる。売りたい人間が溢れる一方で、買い手が消えつつあるのです。
供給過多のこの状況が続けば、当然、価格は下がっていく。さらに最近は、習近平政権による海外資産への締め付け強化により、相場より安い値段でもいいからさっさと損切りをしようという中国人オーナーも増えている。
晴海フラッグの価格はいずれ、一気に下落するおそれがあります。近い将来、中古相場が新築時の販売価格を割る可能性も考えられます」
もちろん、晴海フラッグの住民の大多数は平穏に暮らしている。しかし、資産価値が低下することを異様に恐れる住民が一部いることも事実だろう。
湾岸タワマンの象徴的な存在として何かと話題になるがゆえに、評判を落とすわけにはいかない―そんな強迫観念が、相互監視をエスカレートさせたのかもしれない。
「週刊現代」2026年3月16日号より
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