女性総理のもとで女性天皇をーー。国民は期待の目を向ける。ところが、これから進められようとしているのは、まったく別のシナリオなのだ。
高市総理が意欲を燃やす「皇室典範の改正」
衆院選で自民党が歴史的大勝を収めてから1ヵ月弱。いまだ「高市フィーバー」は衰える気配がない。
旧態依然とした永田町政治を、女性の感覚で刷新してほしい―そんな有権者の熱い期待を背負う高市早苗総理が、意欲を燃やしているのが「皇室典範の改正」だ。
「国家の基本に関わる先送りできない課題と認識している」
第2次政権発足直後の会見では、こう語気を強めた。
現在、皇室は深刻な皇族減少に悩んでいる。次世代の男性皇族は悠仁さまお一人のみ。そんな未曾有の危機にあって、国民が熱烈な視線を送るのが、「愛子天皇」の誕生である。
愛子さまが皇位継承の土俵に上がるための第一関門は「ご結婚後の身分」にある。皇室典範では、女性皇族は一般男性と結婚すれば皇籍を離脱することが定められている。これを改正して、結婚後も皇族の身分を保持できるようにすることが絶対条件となる。
その上で、将来的に「男系男子」というこれまでの伝統の縛りが解かれ、「女性天皇」が認められることになれば、今上天皇の第1子である愛子さまの即位が現実味を帯びる。
国民の多くは「女性天皇」を容認
各社の世論調査では、女性天皇容認の声は70%から90%という圧倒的な数字を叩き出している。自民党旧二階派の中堅議員が言う。
「国民世論は、愛子天皇を待ち望んでいます。女性総理のもとで女性天皇が認められれば、高市さんにとっても大きなレガシーとなるでしょう」
この議員は同時に、「でも、自分のような意見は党内では少数派だ」と肩を落とす。
その言葉通り高市自民党の公約は、国民の期待を裏切るものといえる。皇室についての項には、こう記されている。
〈安定的な皇位継承のため、「皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする」案を第一優先として、皇室典範の改正を目指します〉
これまで皇室典範改正の議論は、この旧宮家などの男系男子を養子縁組して皇族に復帰させ、「世継ぎ候補」とする案と、前述したような女性皇族が結婚しても皇族の身分を保持できるようにする案の2つを軸に進められてきた。ところが公約では、後者は一切言及されていない。
高市総理も容認していたはずなのに
名古屋大学准教授で象徴天皇制を研究する河西秀哉氏はこう嘆息する。
「選挙では消費減税など経済対策に注目が集まっていたので、皇室典範について『えっ、そうだったの!?』と驚いている方もいるでしょう。でも公約に掲げて選挙に勝利した以上、与党は『養子案』を中心に議論を進めていくでしょう」
かつては、高市総理も「愛子天皇」を容認していた。月刊誌『文藝春秋』(’22年1月号)では、ノンフィクション作家・石井妙子氏のインタビューにこう答えている。
「私は女性天皇に反対しているわけではありません。女系天皇に反対しています」
元NHK政治部記者の岩田明子氏が解説する。
「当時は安倍(晋三)元総理がご存命でしたが、安倍元総理は男系男子を原則とし、悠仁さままで皇位継承順位は変更しないとしつつも、『愛子天皇誕生への道筋に向けても責任ある議論を進めなければならない』と口にしていました。皇統を絶やしてはならないという思いが人一倍強いからこそ、現実的な見方をしていたのです」
高市総理の発言は、安倍元総理に合わせたのだろう。では、なぜ総理の座についた途端、養子案優先に「豹変」したのか? 自民党関係者が言う。
保守系団体からの突き上げ
「日本会議など、高市総理を支援する保守系団体からの突き上げが激しいのだろう」
日本会議は、神社本庁などの宗教団体や保守系知識人が中核をなす日本最大規模の右派組織で、男系男子による皇位継承の維持を訴えてきた。会長は、安倍元総理のスピーチライターとしても活躍した元外務官僚の谷口智彦氏だ。その谷口氏は高市総理のブレーンも務めているとされる。
さらに日本会議国会議員懇談会の会長は、先の総選挙で自民党選対委員長として高市総裁を支えた古屋圭司氏だ。旧安倍派の中堅議員は言う。
「衆院選で、私のような旧安倍派をはじめ、保守系の議員が軒並み国会に戻ってきた。高市さんは私たちの意向を無視できないでしょう」
後編記事『「愛子さまが天皇になること」はあり得るのか。「旧宮家」「皇別摂家」に、その可能性を取材すると』へ続く。
「週刊現代」2026年3月16日号より