60年ぶりの天覧試合
8日、東京ドームで行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)2026の1次ラウンド・プールCの日本対オーストラリア戦。野球の国際試合としての天覧試合は、1966年の全日本対ドジャース戦(後楽園)以来、実に60年ぶりのことだった。
国内での注目度が否が応でも高まるなか、天皇・皇后両陛下と愛子さまを前に、侍ジャパンはどのような戦いを見せるのか。そして、この日を心待ちにしていたであろうご一家は、どのようなお召し物で登場されるのか。多くの国民が期待を膨らませていた。
天皇・皇后両陛下と愛子さまは18時半過ぎに来場され、貴賓席・バルコニー席にお出ましになった。そろいのブルーをまとったご一家のお姿に、球場からはひときわ大きな歓声が上がった。
ご一家が客席に手を振られると、ファンも一斉に貴賓席へと手を振り返し、東京ドームは熱気と高揚感に包まれた。貴賓席には前回大会で侍ジャパンを世界一に導いた栗山英樹氏も同席し、ご一家のアテンド役を務めた。
侍ジャパンはここまで台湾、韓国を連破し2連勝。列島全体がWBCの熱気に包まれるなかでの天覧試合となった。
天皇ご一家は生粋の野球ファン
天皇はじめ皇族方がスポーツを観戦されることは、そう珍しいことではない。国民を労う公務の一つでもあるからだ。しかし、今回の天覧試合に臨まれるご一家の思いは、それだけにとどまらない特別なものだったのではないだろうか。
天皇陛下は幼少期、読売ジャイアンツの好打者・末次利光の熱烈なファンであり、東宮御所で野球を楽しむ写真には末次のユニフォーム姿で写られたものも残っている。皇太子時代には2度の始球式を務められるなど、筋金入りの野球ファンであることは広く知られるところだ。
皇后雅子さまもまた、中高時代はソフトボール部の強打者として鳴らし、”スラッガー・マサコ”の異名を持つほどだった。当時は大の巨人ファンで、とくに高田繁がお気に入り。ソフト部での背番号も高田と同じ「8」を選び、ブロマイドを下敷きに挟んで持ち歩いていたというエピソードも残っている。
両陛下の野球愛、そして大谷への関心は、公の場でもたびたび示されている。記者会見や誕生日文書でもその活躍に繰り返し言及されており、昨年10月には天皇陛下が米・トランプ大統領と対面した際、陛下自ら大谷の話題を切り出される場面もあった。日本人選手が米国のチームや社会に「温かく受け入れられている」と謝意を伝えるその姿には、一ファンとしての純粋な喜びがにじんでいるようにも感じられた。
そんな両陛下のもとで育った愛子さまもまた、幼い頃から野球への関心を見せていた。7歳で初めて野球観戦を経験し、同年のWBCをきっかけにその魅力にひきこまれた。当時活躍していた横浜ベイスターズ・内川聖一選手のファンとなり、後に内川選手からサイン入りのバットをプレゼントされたというエピソードも残っている。しかもそのバットをただ飾るのではなく、雅子さまとのティーバッティング練習に活用されていたというから、愛子さまの野球愛の深さがよく伝わってくる。
今回、アテンド役を務めた栗山氏によれば、試合中に愛子さまからチェンジアップの握り方についてなど細かい質問があり、その知識の深さに驚いたという。
勝利を呼ぶブルーに込められた思い
天皇陛下ご一家は、これまでも絵画鑑賞やスポーツ観戦、ご静養などの場で同じ色や素材、柄といった共通点を取り入れた“リンクコーデ”を披露されていることが知られている。服装からもその仲睦まじさが感じられると、たびたび話題になっている。
愛子さまが学習院初等科を卒業される頃から、ご一家のリンクコーデはたびたび見られるようになった。昨夏の那須御用邸でのご静養時にはチェック柄のシャツをそろえたカジュアルな装いが、今年1月に国立西洋美術館の「モネ展」をご鑑賞された際には、展示室の壁紙とも調和したバーガンディのコーディネートが注目を集めた。
今回のコーデは、ご一家そろって水色で統一された、いつも以上にお揃い感の強いスタイルだった。先月の天皇陛下の誕生日会見でも同じ色味のリンクコーデを披露されていたが、それだけご一家にとって特別な意味を持つ色なのかもしれない。
とはいえ、直近で公務が重なる際は、お召し物の色合いが重ならないよう配慮されることが多い。そのため今回はあえて同系色を選ばれたと見るべきだろう。
これまでご一家がスポーツ観戦される際には、開催競技や日本代表のカラーを意識した装いが見られることが多かった。今回の水色コーデもまた、侍ジャパンへのエールを込めた一着と見るのが自然だろう。そこで、日本では古くから勝利を呼ぶ”勝色”として親しまれてきたブルーに、選手たちへの応援の気持ちを込められたのではないだろうか。
今回は愛子さまのお召し物が雅子さまと同じ水色の単色無地であることから、お揃い感がより一層強まって見えた。それぞれの着こなしを具体的に見ていこう。
天皇陛下はネクタイの柄でメリハリを
ご家族そろってのリンクコーデにおいて、天皇陛下はスーツスタイルの場合、基本的にネクタイの色を雅子さま、愛子さまと合わせられることが多い。今回選ばれたのは、斜めストライプの定番柄「レジメンタルタイ」だ。
ご近影時は淡いブルーの小紋柄で柔らかさを表現されていたが、今回は紺と水色の2色によるストライプで、適度なメリハリと力強さが加わった印象である。
スポーツ観戦では遠くからのカメラ撮影も入るため、こうしたメリハリのある柄は視認性も高く、お顔立ちをすっきりとスマートに引き立てる効果もある。そうした場の特性を踏まえて選ばれた一本かもしれない。
雅子さまの洗練された小物づかい
雅子さまのパンツスーツはご近影時と同じものと推察されるが、印象を大きく変えているのが小物づかいだ。今回とくに注目を集めたのは鮮やかなスカーフだろう。
昨年のご公務では大判サイズのスカーフを大胆に垂らしたドラマティックなスタイリングだったが、今回は首元にさりげなくアクセントを添える程度で控えめにまとめている。無地のスーツが単調にならないよう、柄スカーフで華やかさをさりげなく足す、計算された組み合わせといえる。
耳元は、シンプルなパールではあまりに定石すぎる印象になるところを、深みのあるロイヤルブルーのイヤリングを合わせ、あえて輝きの強いデザインをハズしとして取り入れることで、全体に洗練された奥行きが生まれている。
愛子さまのボブカットが話題に
装いの細部にまで気を配られる雅子さまのセンスは、愛子さまにも受け継がれているようだ。
愛子さまがお出ましになってまず目を引いたのは、長い髪をバッサリと切ったボブカットだった。ボブスタイルは場合によっては幼さが出てしまうこともあるが、愛子さまのそれは落ち着きと品格を兼ね備えた洗練された仕上がりだ。そんななかでも、ワンカールの内巻きアレンジには愛子さまらしい柔らかさが感じられる。
ヘアスタイルに合わせるように、お召し物も上品ながらフェミニンに傾倒しすぎないデザインを選ばれていた。これまでの愛子さまのスカートスタイルといえば、襟元に丸みのあるデザインなど可愛らしさを感じさせるものが多かった。
しかし、今回のジャケットはやや直線的なシルエットで、どこかハンサムな印象も漂う。襟元も女性らしい丸襟ではなく、紳士服の定番であるノッチドラペルを採用することで、スマートな雰囲気を表現している。上下左右4つのフラップポケットが配された凝ったデザインは、これまでの愛子さまのお召し物のなかでもとりわけ遊び心が光る一着だ。
ボトムスにパンツではなくスカートを合わせたからこそ、全体が甘くなりすぎないよう、絶妙なバランスで調整されているのだろう。スポーツの場にふさわしい、爽やかで清潔感のあるコーディネートを意識されたように感じられた。
天覧試合を勝利で飾った侍ジャパン
60年ぶりという長い空白、そして過去の天覧試合でミスター長嶋茂雄がサヨナラ本塁打を放つなどの輝かしい歴史があるだけに、スタメン入りした選手たちのプレッシャーは相当なものだっただろう。
試合は前半こそミスが目立ち、苦しい展開となったが、7回、大谷の出塁を足がかりに4番の吉田正尚が逆転2ランを放ち、一振りで流れをひっくり返した。9回に1点差まで詰め寄られる場面もあったが、最後は逃げ切り、1次ラウンド無傷の3連勝を飾った。
勝利が決まった瞬間、貴賓席のご一家も盛んな拍手を送られた。試合後、天皇陛下は栗山氏に「大変良い試合でした」と感想を述べ、両チームをたたえられた。
皇后さまは準々決勝進出を決めた侍ジャパンに向けて、「さらに素晴らしいものを見せてくださることを楽しみにしています」と栗山氏を通じてエールを送られたという。日本代表選手団が深々と一礼すると、ご一家も会釈でそれに応えられた。
勝利のブルーをまとったご一家の前で、侍ジャパンは60年ぶりの天覧試合にふさわしい、見事な勝利を届けてみせた。
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