実は日本に150万世帯もいる「純金融資産1億円以上5億円未満」の大半は、普通に働く、ごく「普通の人」――1月に刊行した『相続税調査でわかった 富裕層が大事にしている「お金の基本」』(講談社+α新書)の売れ行きが発売1ヵ月で3刷と好調だ。「普通の人」が富裕層のように億単位の資産を築くための考え方とやり方を解説する一冊。著者の小林義崇さんは国税局で10年あまり相続税の調査に従事し、多額の相続税を払うほどの富裕層がどのようにお金を増やしたのか丹念に見てきた。具体的に本書からいくつかのトピックをご紹介しよう。
『相続税調査でわかった 富裕層が大事にしている「お金の基本」』連載第2回
『富裕層のお金を熟知する元国税専門官が指摘、「良い借金」と「悪い借金」の見極めをつけないと、あなたのお金は自然消滅する!』より続く。
「リボ払い」はなぜ危険?
借金というと、どこか他人事のように感じるかもしれません。しかし、新しいスマートフォンを分割払いで買ったり、ECサイトの後払いサービスを利用したりするのも、立派な借金です。現金が手元に入らないとしても、将来にわたって返済義務を負うものは、すべて借金と捉える必要があります。
借金には色々な形式がありますが、私が最も警戒すべきと考えているのが、クレジットカードの「リボ払い(リボルビング払い)」です。
リボ払いは、毎月の支払額を「1万円ずつ」というように自分で設定できる仕組みです。「月々の返済額を一定に抑えられる」という点で、家計管理がしやすくなるように思えますが、実はこれこそがリボ払いの恐ろしい罠です。安易にリボ払いを利用すると、非常に高い金利を払い続けることになり、あなたの資産は自動的に減っていきます。
リボ払いがなぜ問題かというと、「借金に対する危機感を麻痺させてしまう」という心理的なメカニズムが働くからです。通常の分割払いであれば、利用額に応じて毎月の支払額が変動します。たとえば元本ベースで考えると10万円の買い物なら3回払いで毎月約3万3000円、100万円の買い物なら毎月約33万円といった具合です。そのため、「これ以上買ったら返済できなくなる」という感覚が自然と働き、無駄使いに対するブレーキになります。
ところがリボ払いは、利用した金額が10万円でも100万円でも、月々の支払額は変わりません。すると、まるでブレーキが壊れた車のように、危機感のないまま借金を重ねやすくなるのです。結果、「月々1万円なら大丈夫」と油断して買い物を重ね、気づいたときには高金利の利息が雪だるま式に膨れ上がり、返済不能となってしまいます。
筆者が陥りかけた布団一枚に借金総額70万円近いローン契約
ここで、恥ずかしい話ですが、私が大学生のときに経験した出来事をお話ししましょう。
ある日、一人暮らしをしていた下宿に、布団のクリーニング業者を名乗る男性が訪ねてきました。社会経験が浅かった私は、サービスで無償クリーニングをしているということで何の気なしに部屋に入れてしまいます。案の定、布団の点検後には「この汚れはクリーニングでは落ちませんね」と告げられ、新しい布団の購入をすすめられました。そして、セールスマンの誘導が始まります。
「どれくらいなら払えそうですか?」と聞かれ、私は「7000円くらいなら……」と答えてしまいました。すると彼は待ってましたとばかりに書類を差し出し、私は言われるがままにサインをしてしまったのです。
翌日、冷静になって書類を読み返し、私は愕然としました。そこに書かれていたのは、利息を含めて月々7000円・8年払い、返済総額が70万円近いという、信じられない内容のショッピングローン契約だったのです。
あのとき、「毎月7000円だったら、アルバイトを増やせば何とかなるかも」と一瞬思いかけたのですが、友人から「どう考えてもおかしい」と諭され、最寄りの消費生活センターに相談したところ、クーリング・オフ制度を利用できるとのことで、契約を解除することができました。
もしもクーリング・オフができていなかったらと思うと今でも恐ろしくなりますが、一瞬とはいえ「毎月7000円なら払える」と高い買い物を自ら納得させようとしたことは事実です。このようなお金に対する不合理な考えには、気をつけなくてはいけません。
後払いで買い物をするときは、月々の支払額だけで判断せず、利息も含めた総額を見なくてはいけません。その金額を払ってでも、今それを手に入れる価値があるのかを考えれば、正しい答えを導き出せるはずです。
返しても返しても借金が減らない仕組み
リボ払いの問題が大きい理由は、返済総額が見えにくいことに加え、極めて高い金利が設定されていることにもあります。リボ払いの金利はクレジットカード会社によって異なりますが、一般的に実質年率15~18%と高く、これは住宅ローンなどとは比較にならないほどの高金利となっています。
また、リボ払いは返済期間が長くなりがちな点も問題です。投資において複利効果が強い味方になることをお伝えしましたが、借金にも複利効果が働くため、リボ払いで支払う利息は指数関数的に拡大していくのです。
たとえば、30万円の買い物を、月々5000円のリボ払い(年率15%)で支払うとします。この場合、支払う利息の総額は約26万円、支払総額は約56万円(約9年で完済)にも達します。30万円の買い物のために余分に26万円も支払うと考えれば、リボ払いが「自動的にお金が減るセッティング」であることがわかるでしょう。
なぜこんな事態に陥るのでしょうか。答えは、毎月の返済額の「中身」にあります。仮に利用開始から初回支払日まで30日間の場合、最初の返済5000円の内訳を見ると、借金の元本に充てられるのは、わずか約1250円。残りの約3750円(30万円×15%÷12ヵ月)は、すべて利息(手数料)として消えていきます。これでは、まるで穴の空いたバケツで水を運ぶようなもので、返済を続けても元本がほとんど減っていきません。
こうしたことは大げさな話ではなく、よくある話なのです。私が税務署に勤めていた頃、奥さんのリボ払いが原因で自宅を売却せざるを得なくなった高齢男性の相談を受けたことがあります。彼が見せた明細書には、毎月数万円を返済しているにもかかわらず元本がほとんど減っていない、まさに「ただ利息を払い続けている」という状況が記されていました。
これほど大きな問題をはらんだリボ払いが、なぜ存在するのかといえば、リボ払いが事業者にとって非常に都合の良いビジネスモデルだからです。消費者には「月々わずかな支払いで済む」と思わせて購買意欲を刺激し、その裏では高金利を長期間にわたって徴収し続ける。このように、事業者側のお金が自動的に増える仕組みである反面、利用者側は自動的にお金を失っていく構造となっています。
クレジットカード会社の多くは、「初回手数料無料」「ポイント還元」といったキャンペーンを頻繁に行っていますが、企業が手間やコストをかけてキャンペーンを行うのは、それ以上の利益を顧客から得られる絶対的な自信があるからなのです。
リボ払いにした人が今すぐ実行すべき3つのステップ
それでは、もしすでにリボ払いを利用している場合はどうすればいいのでしょうか。その場合、すぐに以下の3ステップで行動を起こしましょう。
STEP1:現状を把握する
まず、カード会社のウェブサイトや明細から、現在の「借入総額(リボ残高)」と「金利(実質年率)」を正確に把握してください。月々の返済額ではなく、総額を知ることで正しく危機感をもつことができます。
STEP2:元本を少しでも減らす
可能な範囲で毎月の支払額を増額します。これにより完済までの期間が短縮され、支払う利息も減らせます。銀行のフリーローンやおまとめローンに借り換えて金利負担を軽減する方法も有効ですが、審査が入るため、返済を延滞する前に手続きをするのが鉄則です。
STEP3:リボ払いの解除
カード会社に連絡し、リボ払いの設定を解除するか、利用限度額をゼロに設定します。こうして最初からリボ払いができないように設定しておけば、リボ地獄に落ちるリスクをなくすことができます。
リボ払いの問題は、家庭内に潜んでいることもあります。もし家族の中に、「ついリボ払いに走ってしまう」という人がいるなら、話し合いが必要です。消費者庁や金融庁のウェブサイトにリボ払いの危険性やシミュレーションが掲載されていますので、「支払総額はいくらになるか」を家族で一緒に計算することで、家族全員で危機意識を共有することができます。