3月8日は国際女性デー。それにともない、2025年に公開された映画『女性の休日』をきっかけとした「女性の休日PROJECT」が立ち上がり、3月6日から12日まで自主的なイベントが3月4日時点でも210以上開催されている。
FRaUでは、3月5日、「女性の休日WEEKのキックオフ」ともいえるイベントを、ジャーナリストの浜田敬子さんの声掛けから、NewsPicks for WEと共同で開催した。それが、「浜田敬子さん、鳥飼茜さん、能條桃子さんと「女性の休日」しませんか?日本をアイスランドに近づけるための大ブレスト会議」だ。
そこでは、多くの参加者のアンケートをもとに「もやもやしていること」を共有し、どうしたら女性差別をなくし、女性も男性もハッピーになれるのかを考えるイベントになった。そこで国際女性デーに、そこで出たキーワードを解説する記事を紹介していく。その1回は、「どうしたらジェンダーギャップが改善されると思いますか?」という問いで1位になったテーマだ。
『女性の休日』とは
まず、これらのイベントが開催されるきっかけとなった映画について簡単に紹介しよう。『女性の休日』は2025年10月25日からロングランを続けているドキュメンタリー映画だ。この映画は、アイスランドで1975年10月24日に国民の9割の女性が一堂に会した「伝説の一日」の背景を伝えている。
アイスランドはジェンダーギャップ指数16年連続1位となっているが、50年前は男女の賃金格差も同じ仕事をしても女性は男性の6割しかもらえていなかったし、女性は船長や弁護士にはなれないと言われていた。ジェンダーギャップ指数118位の日本と同じなのだ。
3月6日に開催された上映会とイベントでは、登壇したアクサ生命の代表取締役社長兼CEOの安渕聖司さんが映画『女性の休日』を見てこのように語っていた。
「経済同友会の勉強会にアイスランド大使に来てもらって、『女性の休日』の話を聞いていたのですが、実際映画を見てその100倍ぐらい感動しました。実際やった人たちが本当に語っているというところが今日から振り返って語っているのが素晴らしい。もう一つ思ったのは、ジェンダーギャップ世界1位なのに、毎年まだまだ改善を続けていることです。1位が改善を続けてるんですね。100位以下の国が続けないことはあり得ないことです。本当にインパクトのある映画でした」
では何を「改善」していけばよいのだろうか。
ジェンダーギャップ解消のために必要なことは?
FRaU×NewsPicks for WEのイベントでは4つのセッションが行われた。そのうちひとつが「私たちは男性を愛してる。でもちょっと変わってほしいだけ~みんなで考える「こうなったらいいな」妄想セッション」だ。「私たちは男性を愛してる。でもちょっと変わってほしいだけ」というのは、映画『女性の休日』に出てきた言葉でもある。
アンケートでは「以下のキーワードで何を改善すれば、ジェンダーギャップが解消されると思いますか? 3つまで選んでください」という質問をした。
〇ケアワークの負担(家事育児、介護など)
〇会食・ゴルフで決まることの多い仕事
〇長時間労働
〇クオータ制
〇男性育休100%
〇選択的夫婦別姓
〇その他
「選択的夫婦別姓」が1位に
アンケートで1位になったのは「選択的夫婦別姓」。2位は「ケアワークが女性にまかされがち」3位は「長時間労働」と続く。
ではこれらの選択肢を解説するために、国際女性デーの本日から3日にわたり、過去の記事をピックアップしていくつか紹介していこう。第1回は「選択的夫婦別姓」。
夫の立場から気づいた「キャリアの分断」
2019年3月にリニューアルした「FRaUweb」では、その年から多くの選択的夫婦別姓の権利がないことで生じている苦悩を紹介してきた。
たとえば研究者同士の夫婦で、海外に在住の中川まろみさんが、夫の立場から伝えた記事は、「法律婚で姓が変わることによるキャリアの分断」の現状を明らかにした。
「夫が知らなかった、「夫婦同姓」が妻にもたらした苦しみ」(中川まろみ/2019年12月)
姓が変わるとパスポートや銀行、とにかくすべての姓を変えなければならない手続きの猥雑さも話題となるが、「それよりも別の問題がある」ことの気づきを伝えている。
選択的夫婦別姓についてずっと活動している「あすにわ」の井田奈穂さんも、旧姓の通称使用で医師がニセ医者と責められた実例を紹介している。
「医師が患者から「ニセ医者!」と責められ…旧姓の通称使用「トラブル続出」の現実」(井田奈穂/2021年10月)
高市早苗総理は、法律婚の際にどちらかが必ず姓を改めるという夫婦同姓制度のまま、結婚前の旧姓を通称として広く使えるようにする「旧姓の通称利用」を法制化しようとしている。しかし希望した人が夫婦別々の姓を選べる選択的夫婦別姓とは別だし、旧姓使用の通称利用は「ふたつの名前を持つ」ことになり、混乱が予想される。
そもそも選択的夫婦別姓が認められていないのは世界のなかでもほぼ日本だけと言われる。国連の女性差別撤廃委員会から、結婚後に姓を選択できないことは人権侵害にあたるとして、2025年までに民法750条の改正を求めて4回勧告を受けているのだ。
法律婚をした人が次は事実婚に
ジャーナリストのかつては法律婚をしつつ、2回目は事実婚を選んだというジャーナリストの浜田敬子さんが実体験をもとに伝えている。浜田さんは番組の中で片山さつきさんと「なぜ選択的夫婦別姓が許されないのか」を討論、そのときのこともにつづっている。
「「選択的夫婦別姓」がまた遠のいた…一度法律婚した私が17年前に事実婚を選んだ理由」(浜田敬子/2021年6月)
『選択的夫婦別姓テーマに片山さつき氏と対談して感じた「反対の本意」』(2021年10月)
バービーさんが選択的夫婦別姓が実現するまで結婚しないでいようと考えており、パートナーと議論になったこともつづっている。
バービーが振り返る「選択的夫婦別姓」1年前結婚直前の「大ゲンカ」(バービー/2022年4月)
旧姓の事務処理を怠ってブラックリストに…
当日イベントで司会をしたFRaUweb編集長の新町は、そのイベントでも「実は私が悪いんですが、姓を変えなければならなかったことで9000円でブラックリストに載り、ローンを組むことができなかったことがあります」と恥ずかしい過去を告白。そのときのことも記事に明らかにしている。事務処理を怠っていた本人が悪いのだが、銀行の窓口は平日の15時まで。「姓を変える猥雑さ」は意外と大きな影響を与えるのだ。
前編「30代会社員が数年未使用のクレジットカードを使用して起こった「悲劇」」 (FRaU編集部/2024年9月)
後編 クレジットカード使用9000円で「金融事故」。36歳会社員がローン却下された原因(FRaU編集部/2024年9月)
「選択できる権利」が許されないということ
2026年2月に刊行となったエッセイ『今世紀最大の理不尽 それでも、結婚がしたかった』(文藝春秋)で、姓を変えるわずらわしさを「罰ゲーム」と評したのは、漫画家の鳥飼茜さんだ。2度の結婚と離婚を経て、3度目の結婚を前に体験した、姓の変更にまつわる“理不尽”を綴ったものだ。
本書から抜粋した記事もインタビューも、とても多くの反響を得た。
『今世紀最大の理不尽』特別抜粋記事 (鳥飼茜/2026年2月)
1前編) 2度の離婚を経て1度目の夫の姓に変えようと役所に申請したら「今日法律が変わりました」と言われて拒絶された話
1後編)法律婚で夫の姓になるのが94%。2度の離婚をした漫画家が一度目の夫の姓にしようとして知った「理不尽な現実」
2前編)2度目の離婚のあと、1度目の夫の姓になるため家裁に行った漫画家に降りてきた「法律婚・第三の選択肢」
2後編)2度離婚した漫画家が気づいた「究極の男女平等な法律婚」。結婚を考えている彼の母と話して思ったこと
鳥飼茜さんインタビュー記事 (長谷川あや/2026年3月)
前編)女性としての尊厳を口にすると男性の尊厳を損ねると思い込んでいた…2度離婚した漫画家の気づき
後編)2度離婚して3度目のパートナーの結婚を決めた漫画家が分かった「こういう人とは結婚しないほうがいい」教訓
鳥飼さんが繰り返しエッセイにも書き、語ったのが「尊厳」という言葉だ。世界でも「選択肢がない」ほぼ唯一の国である日本で、個人の尊厳は、果たして国から大切にされているのか。鳥飼さんの著書やインタビューからは、そんな疑問が浮かび上がる。
姓が変わったことがないからわからない
さて、3月5日のイベントのあと、参加者の男性からこんなコメントが寄せられた。
「1位が選択的夫婦別姓だったことに驚きました。そこまで影響しているんですね。自分が変わったことがないからわからないんですよ」
男女共同参画の発表によれば、日本では夫婦同姓の94%以上が夫の姓となっている。つまりは結婚をしてきた多くの男性は「姓が変わる」経験をしたことがなく、だからこそわからない。それも当然だ。
選択的夫婦別姓に反対し、旧姓の通称使用を法制化しようとしている高市早苗総理は、かつて山本拓氏と結婚した際に姓を変え、戸籍では山本となった後に離婚。同じ山本氏と再婚するにあたり、山本氏が高市姓となった。「姓が変わる経験」をしたからこそ、再婚では自分の姓を変えなかったのではないだろうか。
後日、実際アンケートに寄せられた生の声も紹介していく。
構成・文/FRaUweb新町真弓