史上最長と言われた春節が終わった。しかしながら、前編記事『14兆円かけた中国版シリコンバレーはゴーストタウン化し肝いり経済構想に大打撃…習近平、面目丸つぶれの事態』で見てきたように、1日の1人当たり消費額は前年比で約1割減になるなど中国政府が期待するほどの効果は得られなかった。
また、習近平肝いりのアジア・ヨーロッパ・アフリカを結ぶ巨大な経済圏構想「一帯一路」の中核を担う、イランが米国・イスラエルによって攻撃をされるなど、中国経済には暗い影が付きまとっている。
国有企業は良いけれど…
中国では3月5日から年に1度の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開催される。第15次5カ年計画(2026~30年)の審議が主な議題だ。
気がかりなのは、中国が計画経済色を強めていることだ。
中国政府は2月28日、「民間企業による昨年の固定資産投資が前年比6.4%減だった」と発表した。国有企業も含めた全体に占める比率は、2013年の統計開始以降で初の50%割れとなった。国有企業が幅を利かして民業を圧迫する「国進民退」が鮮明になっている形だ。
今後の中国経済の牽引役として期待されるヒト型ロボットだが、「隠れた意図があるのではないか」との指摘が出ている。
軍備拡張は一層進むものの
中国では国を挙げてヒト型ロボットの躍進を内外にアピールしているが、専門家は「ロボットの兵器化が真の狙いだ」と警鐘を鳴らしている。
背景には「軍需で経済を回復させる」とする軍事ケインズ主義の発想があり、中国の軍備拡張は今後も一層進むと見て間違いないだろう。
一方、26年に入って制服組のトップ張又侠・中央軍事委員会副主席と劉振立・統合参謀部長らが失脚するなど、習氏の度重なる粛清で人民解放軍の実戦能力が落ちているのも事実だ。
英国際戦略研究所は24日、「中国で続く軍内部の汚職粛清により、指揮系統に深刻な不備が生じ、急速に近代化する人民解放軍の即応体制が損なわれている可能性が高い」との見解を示した。
たしかにそのとおりだが、人民解放軍が中国共産党の軍隊から習氏個人の軍隊に変容したことのリスクも見逃せないと思う。
中国の「台湾侵攻」はありうるのか
筆者の念頭にあるのは1979年の中越戦争だ。
中国は友好国であるカンボジアへの圧力を高めるベトナムに対し、「懲罰を与える」として1979年2月に軍事侵攻を開始した。当初は優勢だったが、指揮命令系統の乱れなどから苦戦し、同3月に撤退を余儀なくされた。
大敗を喫したものの、朝鮮戦争以来の大規模戦争を主導したことで、毛沢東死後の権力闘争を戦ってきた鄧小平が確固たる権力基盤を築いたという経緯がある。
人民解放軍を私物化した習氏が、「鄧小平に続け」とばかりに作戦の成否にかかわらず、自身の権力基盤の強化を目的に台湾侵攻に踏み切る可能性は排除できなくなっているのではないだろうか。
中国の台湾侵攻が世界経済に与える影響は甚大だ。
ブルームバーグ・エコノミストは26日、「台湾を巡って戦争が勃発すれば、最悪の場合、世界の国内総生産(GDP)は最初の1年で約10.6兆ドル(約1630兆円、約10%に相当)が失われる」とする分析結果を示した。新型コロナウイルス禍や2008年のリーマンショックを上回る規模だ。
注目すべきは、日本への打撃が米国(GDPは7%減)や中国(同11%減)よりも大きい(15%減)ことだ。
窮地に追い込まれつつある習氏が蛮行に踏み出さないことを祈るばかりだ。
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