高市政権の圧勝で株高に沸く日本経済。しかし、漫然と過ごすと資産が目減りする恐れも。着実に資産を守り、賢く増やす方法をお伝えします。
総理の表情が険しい理由
「歴史的圧勝と言うほかありません。自民党単独で衆議院の3分の2以上の議席を確保したため、仮に参議院で法案が否決されても、衆議院での再可決が可能となりました。高市(早苗)総理の独壇場です」
政治ジャーナリストの青山和弘氏はこう語る。自民党は先日の衆院選で316議席を獲得。まもなく第2次高市内閣が発足する。
ところが、高市総理の表情は浮かない。弾ける笑顔がチャームポイントだったはずが、最近は表情が険しく、時折こわばった笑みを浮かべるだけ。
一橋大学大学院経済学研究科の佐藤主光教授は、金融マーケットを意識してのことではないかと推測する。
「今回、高市さんは『責任ある積極財政』を掲げ、国民の圧倒的支持を得ました。しかし、いまや民意だけでは国の財政運営はできません。マーケットの動きにも目配りをしなければならない。
もし、高市さんが放漫財政へ突き進むと見なされれば、為替相場は一気に円安に振れるでしょう。円安になれば、もちろんエネルギー資源を始めとした輸入物価は高騰し、家計を直撃します」
選挙期間中には、高市総理の「外為特会ホクホク」発言がマーケットに円安を容認していると受け止められ、一時1ドル=157円台まで円が急落する事態ともなった。元時事通信記者でジャーナリストの軽部謙介氏はこう嘆く。
マーケットに振り回され対応は後手に
「本来であれば、政府自らが財政再建目標を設定し、主体的に政策を打ち出すべきです。ところが、高市政権はマーケットの警鐘を受けてから、はじめて口先で取り繕うということを繰り返している。順番が逆ではないでしょうか」
もし選挙圧勝で気が緩み、相好を崩せば、財政規律まで緩んだと判断されかねない。それゆえ、険しい表情を崩せずにいるというわけだ。
自民党があまりにバカ勝ちしたため、高市総理はフリーハンドを得たように見えるが、実際はそうではない。政治解説者の篠原文也氏が語る。
「今回の選挙は、高市氏を総理として信任するかを問う『首相公選』の色合いが強く、まるでアメリカ大統領選のような盛り上がりを見せました。そして、高市人気で自民党が勝利を収めた。
しかし、これだけ議員の数が増えると党内の結束に不安が残ります。当選してきた議員の中には、リベラル派もいれば財政規律派もいる。高市さんはそうした人たちにも、気を使わなければならない」
実際、高市総理は相当な気配りを見せている。「2年間限定の食料品消費税ゼロ」については、野党や有識者を交えた「国民会議」で検討を加速するとして、ワンクッション置いた。
予算案に込められた「高市総理のメッセージ」
さらに、これから特別国会で審議される’26年度予算案についても、「意外感」が広がっている。昨年末に閣議決定された一般会計総額は122兆3092億円。前年度当初予算を7兆円あまり上回り、多くのメディアは財政悪化の懸念が増大したと報じた。しかし、経済評論家・加谷珪一氏の見方は異なる。
「注目すべきは国債の発行額です。確かに新規発行額は増えたものの、伸び率は3・3%と物価上昇率に近い数字になっている。というよりも、新規発行をあえて物価上昇率の範囲に抑えているように見えます。見る人が見たら積極財政ではないと映ります」
すでに閣議決定した今年度予算案はともかく、’27年度の予算案から大型化されることも予想される。こうした懸念に対し、高市総理は選挙後の記者会見でこう語っている。
「補正予算が組まれることを前提とした予算編成と決別し、必要な予算は当初予算で措置する」
この発言の意図を加谷氏はこう分析する。
「これまでは、通常国会で110兆円規模の当初予算を通して、秋の臨時国会で20兆円程度の補正予算を通す、と二本立てでやってきました。これを一本化すれば、当初予算で130兆円通すことになる。一見すると大型予算のため、マスコミが騒ぎ立てて、『積極財政』を演出できます。
一方、マーケットに対しては、『補正を組まないため、総額は従来と変わらない』という安心材料を与えられる。こうして、為替の安定を図るのではないかと思われます」
積極財政を大々的にアピールしながら、実際には大盤振る舞いまではしない―高市政権は絶妙な綱渡りをしようとしているのだ。
【後編を読む】高市政権で「消費減税」を達成しても、庶民の生活は苦しくなるだけ…?「責任ある積極財政」に隠されたカラクリ
「週刊現代」2026年3月2日号より