体のだるさ、手足の冷え、肌のくすみ——。こうした不調の原因は、血管が硬くなっているサインかもしれません。
血管・心臓のエキスパートとして国際的に活躍する医師・高橋亮氏は、「打つ手ナシ」と見放された患者の血管をよみがえらせた実績を持ちます。鍵となるのは、NO(エヌオー=一酸化窒素)という血管を広げる物質。ストレッチで筋肉を伸ばすとNOが分泌され、血管がしなやかさを取り戻すのです。
では、なぜストレッチでNOが分泌されるのか——。
高橋氏が、血管を広げるメカニズムを解説し、スマホやテレビを見ながら、椅子に座ったままでできる方法をまとめた『血管の名医が薬よりも頼りにしている狭くなった血管を広げるずぼらストレッチ』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けします。
血管には「ずぼら」な態度でのストレッチが効く!
どうして「体をほぐす」だけでNOが増えるのでしょうか?
どのような時に、NOが分泌されるのでしょうか?
血液が流れる時、血管の内側には摩擦のような力がかかります。
少しわかりやすく言うと「血管の内側をなでる力」でしょうか。
この”なでる力”が適度にあると、血管内皮細胞が「あ、血液がちゃんと流れているな」と感知して、NOを出します。
これが「ずり応力(おうりょく)」と呼ばれるメカニズムです。
「ずり」というのは、ものが横に「ずれる」「滑る」ということ。
「応力」は、「外から力を受けた時に、物体の内部でそれに応じて生じる力」という意味の言葉です。
合わせると、「血液が横にずれた時に、血管の内部で生じる力」と言えます。
なんだかややこしくて、頭がこんがらがってしまいますね。
だから、そんな専門的な意味は気にしなくて大丈夫!
もっとも大切なのは、ストレッチで筋肉を伸ばすとこの「ずり応力」が高まるという事実のほうです。
血管が引き伸ばされて、血管内皮細胞への刺激が強くなる。すると、普段よりも多くのNOが分泌されるのです。
ストレッチで分泌されたNOは、血液に乗って全身を巡ります。
前項でお伝えしたように、30〜60秒ほどの短い時間に血流は全身を一周します。
そうして、全身の血管の壁をやわらかくしていくわけです。
足をストレッチするだけで全身の血管がやわらかく
そして、ここも重要なポイントです。
たとえば、足のストレッチをしたとします。すると、足の筋肉の血管からNOが分泌されます。このNOは血液とともに全身を流れて、首の血管にも、心臓の血管にも、脳の血管にも届くのです。足には大きな筋肉があるため、少しの動作で大きな効果が期待できます。
だから、足をストレッチするだけで、全身の血管がやわらかくなる。下半身を伸ばすだけで、首の血管の詰まりが改善する──そんな血管にとって”最高の状態”になるのです。
ストレッチを中心とした習慣を続けるだけで頸動脈の詰まりが開通した患者さんもいます。
複数の病院で「もう打つ手なし」と言われた状態から、1年で劇的に回復したのです。
この患者さんが特別だったわけではありません。
NOという物質の働きを理解し、それを効率よく分泌させる方法を実践しただけです。
事実、ストレッチとNOの関係は、アメリカや日本など、世界中の研究で証明されています。
被験者のグループを2つに分けて、片方のグループには筋肉が痛くならず、息も上がらない程度の「ゆるめのストレッチ」を数週間続けてもらいました。もう片方は何もしないグループです。その結果、ストレッチを続けたグループは血管の柔軟性が明らかに改善したのです。
別の研究では、ストレッチの直後に、血管が広がる可能性が示されました。
それは堀田一樹氏らによる急性心筋梗塞患者を対象とした臨床試験で、わずか10分程度のストレッチの後に、血管内皮機能が有意に向上したことがわかったのです。
つまり、ストレッチをした瞬間から、血管はやわらかくなり始めているのです。これが薬を飲むよりもストレッチをすすめる理由です。
激しい運動よりも、ゆるいストレッチが効果的
ここで面白いのが、激しい運動よりも、ゆるいストレッチのほうがNOの分泌には効果的だという点です。
激しい運動をすると、確かに心拍数は上がります。汗もたくさんかく。でも、それは体にストレスをかけている状態でもあります。体がストレスを受けると、交感神経が優位になり、血管は収縮してしまいます。
一方、ゆるいストレッチは体にストレスをかけません。
リラックスした状態で筋肉を伸ばすと、副交感神経が優位になります。
この状態の時、NOは最も効率よく分泌されるのです。
「気持ちいい」と感じる程度のストレッチ──これが、NOを最大限に引き出すコツです。
ストレッチなら、体力に自信がない人でも、誰でもその場でできます。
高齢者でも、運動習慣のない人でも、今日から始められます。
お金もかからず、器具もいらず、家の中でもできます。
そして何より、ストレッチは「気持ちいい」。だから続けられるのです。
【後編を読む】『高血圧必見!正月こそ「ずぼら運動」をしよう…食事制限より簡単にできる血管ストレッチ』