結局、具体策はなし
中国経済の迷走が続いている。
習近平指導部は12月10~11日、来年の経済運営方針を決定する「中央経済工作会議」を開催した。国内経済に関して「供給の強さと需要の弱さの矛盾が顕著だ」と分析し、「内需主導を堅持し、強大な国内市場をつくる」との方針を示したが、具体的な道筋は明らかになっていない。
「積極財政を維持している」としているが、今年の財政赤字額が国内総生産(GDP)に対して4%と過去最高となるため、税制優遇や補助金政策の縮小に言及している有様だ。
政府の優遇策縮小で最も打撃を被るのは自動車業界だ。
全国乗用車市場信息聯席会(中国の自動車業界団体)は8日、「来年の自動車市場は巨大な圧力に直面する」との見方を示した。新エネルギー車購入時にかかる自動車購入税の免除措置や買い換え補助金が今年末で終了するため、4000億元(約8.8兆円)近い購入促進効果が失われると見込まれるからだ。
中国経済は八方ふさがりに
その影響はすでに出ている。中国の11月の乗用車販売は前年比8.5%減の224万台と2ヵ月連続で前年割れとなった。年末の政府補助金縮小を控えた駆け込み需要が弱まり、過去10ヵ月で最大の落ち込みとなった。
不況の元凶である不動産対策についても、新たな具体策は示されなかった。
不動産対策は「諸刃の剣」だ。刺激策を講ずれば、長年かけて解消しようとしてきた不動産投機が復活しかねない。中国政府は慎重な対応を続けるしかないのが実情だ。
不動産不況は中国経済の内需低下をもたらしたばかりか、資金の流れが不動産から製造業分野に振り替わる効果をもたらした。その変化があまりに急激だったため、製造業の内巻(企業間の過当競争によって財やサービスの価格が持続的に下落し、共倒れの状況に陥ること)化を招いてしまったほどだ。
八方塞がりの経済に対する中国政府の処方箋は「需要を喚起するような質の高い投資を行うことで、過剰生産問題の解決を実現する」というものだ。だが、「言うは易し、行うは難し」。このような都合の良い投資が見つかるとは思えず、「絵に描いた餅」に終わるのではないだろうか。
貿易黒字が積みあがるも
米国との貿易摩擦や不動産市場の悪化などの問題を抱えながらも、中国経済は予想以上に底堅い。その要因は好調な輸出だ。経済成長の4割を輸出に依存しているとの指摘がある。
中国の11月の輸出(ドル建て)で前年比5.9%増と市場予想(3.8%増)を上回った。対米輸出は前年比29%減少したが、その他の地域向けが大きく伸びた。
中国のトータルの貿易黒字も12月を待たずに1兆ドルを超え、史上最高を更新した。今年の経常黒字もGDP比で3.3%に達すると予想されている。
輸出の急増に伴い貿易不均衡もまた拡大が進むなかで、米国関税を避けた輸出業者は欧州を目指し始めた。
貿易黒字が増え、好況に見える一方で急な輸出増の影響を受けるEUからは反発の声も見られるようになった。たとえば仏・マクロン大統領はこの貿易不均衡を「耐え難い」と表現している。
対立はどこに行きつくのか。後編『過去最大、EU対中赤字「46兆5000億円」の衝撃…!そして仏・マクロン大統領が明言した中国への「強硬措置」の中身』にて詳しく見ていく。