転職エージェントは、非公開求人情報へのアクセスや、専門的なアドバイス、企業との交渉代行など、多くのメリットを提供してくれる、転職活動における強力なパートナーとなり得ます。彼らをいかにうまく「活用」し、味方につけるかが、転職成功の大きな鍵を握ると言っても過言ではありません。
本稿では、転職エージェントとの効果的な付き合い方、そして彼らの力を最大限に引き出すための「秘技」とも言えるノウハウを川野智己氏の『転職に向いてない人がそれでも転職に成功する思考法』(東洋経済新報社)より一部抜粋・編集してお伝えします。
【前編記事】『じつは「週休2日」は土日休みではない…「契約ありき」で求職者を疲弊させる「悪質転職エージェント」の見抜き方【転職ノウハウ】』よりつづく。
信頼できる担当者とは?
■面談時の的確なアドバイスの有無
初めての面談では、あなたの履歴書や職務経歴書をもとに、自己紹介やこれまでの経験について話す機会があります。その際に、応募書類の書き方や話し方、アピールポイントの整理などについて、具体的で的確な指導やアドバイスをしてくれるかどうかが1つの目安です。
■新しい視点でのキャリア提案の有無
「これまでのご経験を踏まえると、新たに〇〇といった領域でもご活躍できる可能性があります。このような求人にチャレンジしてみませんか?」など、あなたの固定観念を良い意味で覆すような、新しい視点からのキャリア提案をしてくれるかどうか。あなたの可能性を広げようとしてくれる姿勢があるかを見極めましょう。
■求人案件に関する深い知識と説明力
担当者がすすめてくる求人案件について、募集の背景(欠員補充なのか、事業拡大による増員なのか)、面接での重要ポイント、社風、経営者の個性などについて、具体的に説明できるかどうかも大切です。もしその場でわからないことがあっても、「(求人企業と接している)営業担当に確認して後日ご連絡します」といった誠実な対応をしてくれるかどうかで、信頼できる担当者なのかがわかります。
■気になるスカウトメールへの賢い対応法
転職エージェントから送られてくるスカウトメール。その多くは、実は若手の担当者が送信していると言われています。もし、あなたがそのメールにそのまま返信してしまうと、その送信者である若手社員が、あなたの担当エージェントとしてアサインされる可能性が高くなります。
しかし、言うまでもなく、経験の浅い若手社員よりも、業界知識や交渉力に長けた経験豊富なベテラン社員に担当してもらうほうが、転職活動を有利に進められる可能性は高まります。
そこで、もし気になるスカウトメールが届いたとしても、そのまま返信するのは避けましょう。まずは、その転職エージェントのホームページを確認し、コンサルタント紹介のページなどから、あなたの希望する業界や職種に詳しそうなベテラン社員の名前をいくつか控えておきます。その後、その転職エージェントに直接電話をするか、問い合わせ用のメールアドレスに連絡を取り、
「先日、スカウトメールでご紹介いただいた求人番号〇〇の案件について、詳細をおうかがいしたいのですが、私のこれまでのキャリアや今後の希望をより深くご理解いただける方に担当をお願いしたいと考えております。私の現在の勤務業界は少々特殊なため(たとえ特殊でなくても、このように伝えてみましょう)、ホームページを拝見したところ、御社社員の〇〇様(あるいは△△様)にぜひご担当いただけないでしょうか」
と、具体的に担当者を指名して依頼してみるのです。転職エージェント側からすれば、求職者から具体的なアクションがあることは歓迎すべきことであり、あなたの申し出を快く受け入れてくれる可能性が高いでしょう。そして何よりも、指名された担当者は、あなたに対してよりいっそう親身になって対応してくれるはずです。
転職エージェントを「最強の味方」にする方法
転職エージェントの担当者も、私たちと同じ人間です。ノルマに追われているという側面は否定できませんが、基本的には、目の前の求職者の役に立ちたい、転職成功の笑顔を見たいという思いを持って、仕事にやり甲斐を感じています。彼らをあなたの「最強の味方」にするために、以下の点を意識して接してみてください。
これらの積極的なコミュニケーションは、「不器用さん(他人を上手に頼ることができず1人で頑張りすぎている)」が、専門家を効果的に活用するために非常に参考になるでしょう。
■最初の面談は「採用面接」のつもりで臨む
担当者との最初の面談は、あなたという「商品」の最初のプレゼンテーションの場です。採用面接に臨むのと同じくらいの真剣さで準備を整え、「この人は有望な人材だ。ぜひサポートしたい」と彼らに思わせることが重要です。
■感謝の気持ちを具体的に伝える
面談後は、遅滞なくお礼のメールを送りましょう。もし面談に関するアンケートが送られてきたら、できるだけ高い評価をつけ、感謝の言葉を具体的に添えることをおすすめします。
■迅速かつ正確な対応を心がける
担当者からの問い合わせや、書類の提出・修正依頼には、できる限り迅速かつ正確に対応しましょう。スムーズなコミュニケーションは、信頼関係の基本です。
■進捗状況をこまめに報告する
たとえ、そのエージェントから紹介された案件がなかなか進展しなくても、他のエージェント経由で進んでいる案件も含め、守秘義務に抵触しない範囲で転職活動全体の進捗状況を定期的に報告しましょう。
■彼らのビジネスに貢献できる情報を提供する
もしあなたが、現在勤務している業界の動向(特にどのような職種の人材が不足しているかなど)に詳しければ、そうした情報を担当者に提供することで、彼らのビジネスに間接的に貢献することができます。
■「売れる人材」を紹介する
もしあなたの周りに、同じように転職を考えている優秀な友人や知人がいれば、担当者に紹介してあげるのもいいでしょう。
■キャリアのアップデート情報を共有する
「新しい資格を取得した」「社内で異動になった」など、あなたのキャリアに関する変化があれば、その都度、職務経歴書を更新して担当者に送り、コンタクトを欠かさないようにしましょう。
このように、担当者と定期的に良好なコミュニケーションを取り続けることで、魅力的な求人案件が発生した際に、真っ先にあなたに声をかけてくれる可能性が高まります。
…つづく<「完璧な準備」で転職に挑んだ「エンジニア」がなぜ…採用試験で「不合格の山」を築いた納得の理由>では転職の失敗事例をもとに面接官の採用心理を詳しくお伝えしています。