盗撮事件は毎日のようにニュースで報じられ、今年発覚した教員らによる盗撮画像共有事件はまだ記憶に新しい。
2023年7月に創設された性的姿態等撮影罪(以下「撮影罪」、法定刑は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」)によって、盗撮への処罰は、従来より明確に重くなった。だが、盗撮事件の増加傾向は続いている。
令和6年(2024年)版の犯罪白書によれば、「迷惑防止条例違反に該当する盗撮事犯の検挙件数は、令和2年は4,000件台、3年からは5,000件台と、増加傾向にあったところ、5年は5,730件」としつつ、「性的姿態等撮影罪が規定された点には留意が必要である」と述べているように、撮影罪に該当する検挙件数を含めれば、横ばいではなく増えているのだ。
近著に『犯罪被害者代理人』(集英社新書)があり、性犯罪に詳しい弁護士・上谷さくら氏は、「日本の盗撮を含めた性犯罪について量刑が軽い傾向はある」と警鐘を鳴らす。
「盗撮罪」ではなく「撮影罪」
2023年、刑法に新たに導入された「撮影罪」。 だが、その名称に「盗撮」という言葉は含まれていない。
上谷氏はその理由をこう説明する。
「“盗撮”は本来、相手に気付かれないように密かに撮ることを指します。しかし実際には、レイプ中の強制的な撮影のように“相手が撮られていると認識しているケース”も処罰すべき。ということで、盗撮という名称だと対象を限定してしまうため、法律名はより範囲を広く“撮影罪”になったのです」
つまり、撮影罪は「相手の意思に反する撮影行為」を包括的に罰するための規定なのだ。
「未成年の盗撮」が急増
撮影罪の成立後、立件数は増えている。しかしその背景には別の現実がある。
「近年は未成年者による盗撮が非常に増えています。今の子どもたちは、生まれたときからスマホで撮られ続けていて、写真を撮ることへの抵抗感も希薄。さらに、親から突然スマホが与えられても、リテラシー教育が十分になされていないため、悪気なく盗撮し、友達同士で共有することも当たり前のようにしています」
子どもの盗撮は、学校側が“揉み消す”ケースすら珍しくないという。
「特に学校内の盗撮は全国的に発生しており、『全ての学校に盗撮がある』と言っても過言ではないと思っています。しかし、加害者が未成年の場合、学校が示談で済ませてしまい報道されないことも大半。学校側は『加害者にも未来があるから』、加害者の親も『ちゃんと消したからもういいでしょ』といったような言い分で盗撮事件を揉み消す事例も、実際に相談として多く寄せられています」
いまだ日本では盗撮に対する認識が甘い。後編記事『「罰金1億円ぐらいにしないとなくならない」専門弁護士が警告する「1000人以上盗撮しても執行猶予という異常事態」』に続く。