かつて“双子タレント”として兄・広海とテレビで活動し、現在はスタイリストとしてアパレル業に携わりつつ、実業家としても活躍するFUKAMI(深海)さん。ADHD・LGBTQIA+当事者であることを公表していますが、過去には両親による育児放棄・児童相談所からの脱走といった波乱万丈な人生を送ってきました。
その生い立ちに起因するように「愛着障がい」によるトラウマを抱え、「自分は普通の幸せを手に入れることなんてできない」と思っていたそう。そんなFUKAMIさんが、なんと愛する人と結婚することにーー。
ネグレクトを受けた経験から人を信じきることができなかった深海さんが、自身と向き合い、アメリカ人と結婚に至るまでのドタバタ劇を綴った新刊『たどりついた リトル・ピース』より一部抜粋・編集し、その波乱万丈なエピソードを、前後編でお届けします。
【前編】『ネグレクトを受けて抱えた「愛着障がい」というトラウマ…メディアで人気のFUKAMIがセラピーを経てたどり着いた両親への想い』よりつづく
アメリカ人男性と、まさかの「婚約」
2025年5月3日、私は婚約しました。相手はニューヨークに住むアメリカ人。日本に住む私と彼が出会ったのはイギリスのロンドン。彼は弟の結婚式に出席するために、たまたま
イギリスを訪れていて、私とバーで知り合ったんです。でも、当時の私にはステディな関係の恋人がいたし、恋愛関係に発展するなんて想像もしていなかったので、そこから2年くらいはずっと友達関係が続いていました。
ですが、彼が私に好意を抱いていることには、なんとなく気づいていました。一度、「いつ、私に本気になったの?」って聞いたことがあるんです。彼いわく、それは出会ってから間もない頃で、一緒にみんなで旅行をしたのがきっかけだったそう。そこで「こんなふうに旅行もできる関係なら、二人の未来を考えてもいいのかな」って、私との関係を真剣に考えるようになったんだとか。
一方、私が彼との関係を真剣に考えるようになったのは2024年。一緒に過ごす時間のなかで、表情だったり、仕草だったり、言葉だったり、その一つひとつに今までほかの人からは受けたことのない愛情を感じて。「この人ほど、私のことを愛してくれる人は現れないんだろうな」と思うようになったのが、すべての始まりでした。
私のために時間を優先してくれたり、自分の気持ちより私の気持ちを第一に考えてくれたり、彼は「相手のために」という気持ちがすごく強い人で。そんな惜しみない気持ちを注いでくれる人は今までいなかったし、こんなに深い愛情を感じたのは本当に初めてのことでした。それが、私にとってはすごくセンセーショナルで……。
その愛情を素直に受け止めることができたのはセラピーに通っているおかげでもあるのかもしれません。無償の愛を信じることができなくて、すぐに逃げたくなってしまっていた私だけど、「この人だったら大丈夫」「何を言っても、何をしても、きっといなくなったりしない」って初めて思うことができたんです。
そして、人生で初めて「I LOVE YOU」の言葉を届けてくれたのも、私にとっては大きな出来事でした。なんとなく、それが大事な言葉というのは知っていたけれど、一応、その意味をChatGPTで確認(笑)。すると「本気で相手を愛しているときに使う、簡単には言えない重要な言葉」であることがわかって。それがすごくうれしかったんです。
あきらめていた「同性婚」に至ったワケ
婚約を発表してから、たくさんの方々がお祝いしてくれました。友達や仕事関係の方をはじめ、お花屋さんからカフェの店員さんまで、「おめでとうございます」の言葉を届けてくれたりして。それはとてもうれしいことでした。
私は、彼に出会うまで結婚願望はなかったんです。というか、そもそも日本では同性婚が認められていないから「あきらめていた」が正解なのかな。でも、彼の暮らすアメリカだと同性婚が合法化されています。だから、結婚という選択肢について考えるようになったのは、それもすごく大きかったんだと思います。
彼と私の、ニューヨーク―東京間の遠距離恋愛は、結婚後もしばらく続きそうです。未来に「二人で一緒に住む」という選択肢はもちろんあるんですけど、私は日本で日本円を稼いでいるし、彼はアメリカで米ドルを稼いでいるし、それぞれの仕事の問題もありますから。しばらくは、お互いの国を行ったり来たりしながらの生活になるんじゃないかな。
そうなると「深海ちゃん、大丈夫? 昔の悪い癖が出て、あちこちで浮気するんじゃないの?」と思う人もいるかもしれないよね(笑)。でも、それに関しては「大丈夫」です! だって、よくよく考えてみて。自分から告白したこともなければ、別れ話を切り出したこともない、完全なる“マチコ”だったこの私が、自分からプロポーズしたんです。
恋愛と真剣に向き合ってこなかった私にとって、彼との関係は“人生初の大恋愛”。毎回、飛行機代に大金を支払って、彼に会うために約往復30時間も飛行機に乗っているんですからね。
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