心を掴む「書き出し」の引力
「なんなんだ、この一文は……」
何気なく手に取った書籍の書き出しにガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた経験はありませか?
本の冒頭、読者が最初に触れるその数行は、まさに作品の顔。作者が知恵を絞り、悩み抜き、これ以上ないという覚悟で送り出した渾身の一撃でもあります。
【総力特集】この書き出しがすごい! は、そんな強烈なインパクトを持つ「書き出し」に注目。日々、言葉と格闘する講談社の編集者たちが、「一瞬で心を掴まれた」「思わず唸った」あるいは「ぶっ飛びすぎて目を疑った」珠玉の書き出しを、熱い推薦コメントとともにお届けします。
第29回の書き出しはこちら
東急田園都市線を長津田で乗り換えて奈良町方面に向かうと、まもなく右手に深い森が見えてくる。「こどもの国」だ。
こちらは椹木野衣さん著『戦争と万博』の冒頭の書き出しです。
【戦争と万博】1970年大阪万博は、敗戦直後「爆心地」を目の当たりにした男の構想を起点とした。文明の過剰と滅亡というそのビジョンを覆い隠すように謳われたスローガン「人類の進歩と調和」が響く中、メタボリズムやネオ・ダダといった前衛運動のひとつの極限として「万博芸術」が花開く──資料と証言を積み重ね、日本で反復される万博の意味を鋭く問う。
《推薦コメント》
重厚なタイトルとすぐには結びつかない「こどもの国」という施設の名前。日常生活にたしかに織り込まれている痕跡を辿っていくと、風景はまた違った顔であらわれます。(編集カ)
唯一無二の「書き出し」の世界。この一文から始まる「続き」が気になったら、ぜひ本書を読み進めてみてください!