女優・唐田えりかさんによる連載『面影』第7回(後編)。
後編では、芸能活動を休業していた唐田さんがふとこぼした「やめたほうがいいかな」という言葉に、思いがけず返ってきたのは、「やめたらだめだよ」というまっすぐな励ましでした。
それぞれ家庭を持ち、母になった彼女たちと、今も笑い合えること。
変わらない友情のかたちを、丁寧に振り返ります。
大切な友人を大切にしてくれるひと
なっちという人間は、いつも想像の上をいってくれる。
学年一怖い先生の授業のときは、ゴキブリ本物そっくりのオモチャを黒板に貼り、先生にドッキリしては、クラス全員で大笑いした。そこから先生ともクラス皆んなとも仲良くなった。
なっちは人見知りで照れ屋だが、そういうコミュニュケーションで人と仲良くなるタイプだ。 なっちとは楽しくふざけた思い出ばかりだ。
そんななっちも今では、妻であり母だ。
先月皆んなで集まったときは、大雨だった。
なっちの旦那さんは、車で迎えにきた。
駐車場まで向かう道中、なっちと子供が濡れないようにするあまり、旦那さんの半分の肩は傘から思いっきり出ていた。
韓ドラみたい!と思わず初めて見る光景に興奮したが、その姿を見たとき、なっちのことを心配していたわけではないのに、心の底から安心した。
自分の大切な友人が、大切にされてることほど、幸せなことはないなぁと思った。
「やめたらだめ」休業中の言葉
高校を卒業して私はすぐに東京へ行ったが、 3人は、地元で生活をし、全員が結婚した。
お仕事を休んでいるとき、4人で集まるタイミングがあった。
その夜、帰りの車の後部座席から皆んなに「うち、仕事やめたほうがいいかなぁ」と聞いたことがある。 あのときの私は、やめたくない自分と、やめたい自分が毎日行き来していた。 続けててもいいのか、自分でもさっぱりわからなかった。
何なら、どこか優しい言葉を言われるのを望んでいた。 皆んななら、やめなよ。と言ってくれるんじゃないかと思った。
でも一番最後に、みさきだけが「やめたらだめだよ」と言った。
びっくりした。いつもふわふわニコニコの、みさきがそんなふうに言うなんて。
「えりかちゃんは、ちゃんと戻れると思う。そんなに好きなこと、なかなか見つけられないし、みさきは羨ましいよ」
「私は何やってるんだろう」と思った
あのときうまく返事ができなかったけど、みさきにそう真っ直ぐに言ってもらったときに、しっかりしろと頭をたたかれたようで、泣いてしまいそうだった。 自分は、いつだって周りに甘えている。
やめるやめないの選択も、人に甘えて決めようとしていた。厳しいことを言わないであろう皆んなに優しい言葉を言われるのを望んで、私は何やってるんだろう。と思った。
夜中で、運転しているみさきの顔は見えなかったけど、今も応援してくれてるんだ。と知った。 あのときに、そう言ってくれたみさきの言葉に今も救われてる。
本当に違う時間を生きる
それから数年後、みさきの家でBBQをした日、じゅんなとなっちは先に帰り、私は家族が迎えにきてくれるのを待っている間、みさきと二人になる時間があった。
みさきの子供の顔を見て癒されていたら、「えりかちゃん、今日みさきの子供見ててどう思った?」と言われた。
自分は子供に対して過保護なんじゃないか、子供の自由さを狭めてないか、自分の教育が合ってるか不安なんだ、とポロポロと泣き始めた。
しっかり者のみさきに、そんな悩みがあったのかと、そしてその悩み自体が素敵すぎて、みさきは本当にお母さんになったんだなぁ。と思った。
守るものができて、母になってゆく顔は、たくましく、かっこよかった。 確実に、良いお母さんだよ。
それと同時に、自分とは本当に違う時間を生きてるんだなぁとも思った。
去年は4人で宮古島に旅行に行ったり、こうして今も時間を共有できること、腹筋が痛くなるほど大笑いできること、支え合えること、一生の友人に出会えて、最高に幸せだ。
東京に行って汚れないかあんなに心配してきたじゅんなにも、「えりか変わらなすぎ!」と逆に叱られるほどだ。こうやって、いつまでも四人で青春をしていたい! いつもありがとう! BIG LOVE♡
【スタッフ】撮影/阿部裕介 スタイリング/道端亜未
【衣装クレジット】
シャツ ¥26,400・パンツ ¥53,900・シューズ ¥36,300/NEEDLES
イヤカフ ¥11,000・リング ¥14,300/Aperdiem
【問い合わせ先】
NEPENTHES WOMAN TOKYO TEL:03-5962-7721
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