女優・唐田えりかさんによる連載『面影』第7回。
高校時代をともに過ごしたのは、“ギャル”たちだったと語る唐田さん。
学校を抜け出して笑い合った午後、そして、芸能界に入るという夢を初めて打ち明けた日——。誰よりも近くで背中を押してくれた親友たちとの記憶をそっと辿ります。
3人のギャルと親友になった
高校時代、いわゆる”ギャル”といわれる友人たちと仲が良かった。
私たち4人は、高校一年生のときに同じクラスになり、出会った。
一人ずつ簡潔に紹介すると、
なっちはヤンキーみが強いギャルだった。失恋を機に、不登校気味になってしまったなっちは高校中退寸前までになったことがある。涙もろく優しい。
みさきは、マインドは完全に少女だが、ギャルの見た目が大好きで、そのメイクをすることを楽しんでいる。見た目だけがギャルで、中身は誰よりもピュアだ。
じゅんなは、クールなギャル。いつもみんなのお世話係になっていた。人を真っ直ぐに叱れる存在。自分よりも他者優先。一番毒舌だが、優しい。
そんなとにかくピュアで優しい3人と、高校時代、ずっと一緒にいた。
私は多分マインドギャルだと思う。それは東京に来てからも友人に言われる。
「なんとなく」勉強していた
私が通っていた女子校は、看護師を目指している人が多かった。 私は小さい頃からモデルの仕事に憧れていたが、その世界に飛び込む勇気も持てず、なんとなく流れに乗って「看護師目指すかぁ」と思っている時期があった。 姉二人とも同じ高校で姉たちは3年間学年一位を保つ成績だったので、私も先生からそう期待されているのを感じていた。
一年生の一学期はあまり自分を周りに出せずに過ごしていた。 そんなとき、じゅんなに「えりかって、実はアホキャラでしょ?」と見抜かれた。 そこから、なっち、みさきとも話すようになり、気付いたら4人でいるようになった。
この3人は誰がどう見ても学年で目立つ存在だった。
「友達間違ったらダメよ」
高校時代の私は、いわゆる”原宿系”みたいな見た目をしていた。
木村カエラさんが好きな私は、前髪をオン眉にしたり、アシメにしたり。 靴下は短く、スニーカーを履き、リュックだった。
ちぐはぐな見た目でも、4人でいるようになってから、「やっと自分の居場所を見つけられた」と思った。 楽しい夏休みが終わると成績が何百位も落ちていて、担任の先生に呼び出された。 成績が良い姉二人の存在も知ってる先生から「何があったの」と聞かれた。 「何もないです」と言うと、「友達間違ったらダメよ」と言われた。 周りから見ると、そう見えるのか!と思った。
ある友人からは、「あの3人といるからえりかちゃんも怖いのかと思ってた」と言われたこともある。私はこんなに毎日が楽しくなったのに!
ギャルは「絆を大切にする」
“ギャル”という言葉にネガティブな印象を持つ人が、もしかしたらいるのかもしれない。
でもこの3人は、超絶ピュアな思いやりに溢れた可愛いギャルだ。誕生日になると、手作りのケーキや、フォトブックをプレゼントしてくれたり、それぞれに何か悩みや困ったことがあると全力で支え合った。
ギャルというのは、絆を大事にする集団なのだ。
学校を抜け出して走った
高校一年のときに、平日にじゅんなのお母さんがお台場に連れていってくれたことがある。
学校を抜け出すために、時間差で2人ずつ保健室に行って小芝居をした。 お腹痛い、くらくらする、気持ち悪い、頭いたい。役割を振り分けた。 小芝居をしながら、なっちが一番上手いなと思った。ヤンキーのやさぐれ感は体調が悪く見える。誰かと目が合ったら笑いそうになるから、見ないように気をつけた。 保健委員の私は、先生と仲が良かったので、先生は仮病だと気付きながらも優しく対応してくれた。
さぁいざ帰宅という瞬間、学年主任の先生が保健室にきた。「あんたたち、わかってるからね」と決め台詞のように言われた。 私たちは校門を出た途端に背筋を伸ばし、じゅんなのお母さんの車まで、笑いながら走った。
夢を打ち明けた日
高校二年になると、じゃんなだけが別のクラスになったが、お昼はいつも4人で体育館を貸し切ってお弁当を食べた。 4人で集まると、ひたすら爆笑して、腹筋が痛くなるほど笑っていた。
そんなある日、私はアルバイト先で、今の事務所にスカウトされた。 密かに抱いていたモデルという夢は、誰にも言っていなかった。 だから、みんなびっくりしただろう。 「昨日さ、芸能事務所にスカウトされたんだぁ」と3人に話すと、なっちとみさきは、「まじー?!どうすんの?やるのー?!」というリアクションだった。 「うん、やろうと思う!」と昂って話していると、じゅんながしかめっつらで「それ、詐欺じゃないの?」と言った。皆んな「え?」と言ったきり、シーンとした。じゅんなだけ明らかにテンションが低かった。 「うち、実はモデルになることが夢だったからやりたいんだよね!」と話しても、「やめたほうがいい」としか言われなかった。 なぜじゅんながそんな態度なのかわからず、私も私で「は?」と思った。
喧嘩みたいな時間が流れ、その昼休みはそれ以上話さず、じゅんなも自分の教室へ帰った。
保健室で2人で大泣きした
なんで理解してくれないの?とイライラとしつつも、大好きなじゅんなと話さないのも寂しくて、いてもたってもいられず、私は授業を抜け出し、保健室へ向かった。 先生の顔を見ると涙が出てしまい、先生はなにも聞かず、「ベッドで休んでいいよ」と言ってくれた。 カーテンを閉め、1人で静かに泣いた。枕がびっしょり濡れていくのがわかるほどに、涙がポロポロ流れ落ちていた。 しばらくすると、先生に、「えりかちゃん、おいで」と言われた。 カーテンを開けると、ソファにじゅんなが座り、わんわんと泣いていた。 じゅんなもビックリして私を見た。お互い泣いていて、なんだかおかしくなって、それまで喧嘩していたのに目が合うと笑ってしまった。
先生も笑って、「青春だねぇ」と言った。じゅんなと先生と3人で、たくさん話した。 じゅんなは、「えりかが東京に行ったら寂しいし、性格が汚れちゃうんじゃないか心配なんだ」と泣きながら言っていた。 いつもツンツンしてるじゅんなが、そんなふうに思ってくれるなんて、可愛くっておかしくって、嬉しかった。
【スタッフ】撮影/阿部裕介 スタイリング/道端亜未
【衣装クレジット】
シャツ ¥26,400・パンツ ¥53,900・シューズ ¥36,300/NEEDLES
イヤカフ ¥11,000・リング ¥14,300/Aperdiem
【問い合わせ先】
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