効果的なポルトガルの「外国人流入策」
ポルトガルの首都リスボンの不動産価格はとても好調です。現地の不動産会社の調査によると、2020〜25年の5年間でエリアによってばらつきがあるものの60〜100%と大きく上昇しています。
前編『「外国資本」だけに頼らずに不動産を上昇させた国があった…!ポルトガル、国民配慮の経済政策、その巧妙な戦略』で紹介したように、現地を見ると、日本と比べて非常に有効な海外資本の活用法と戦略が見て取れます。
ポルトガルには一定以上の投資と居住で永住権を取得できるゴールデンビザ制度があり、23年末までは不動産もその対象でした。
しかし、不動産投資は経済への貢献が小さいという評価がなされ、投資対象から外されました。現在は法人設立や研究開発、文化保存などに資する投資のみが認められています。
上手に開発された「湾岸エリア」
日本ではあまり知られていませんが、ポルトガルは世界でも屈指のリモートワーク先進国として評価されています。
まず、リスボンではほぼすべての店で英語が通じます。さらに欧州の中でも治安が極めてよく、年間300日以上が晴れであるなど、天候や食事面も魅力的です。
こうした環境を求め、海外からテックスタートアップを中心に多くの企業が流入しています。それに触発される形で国内でもIT企業が増加し、リモートワークの機会が広がりました。結果として、パルク・ダス・ナソエンス地区をはじめとする新興エリアが人気となっています。
前述したように、不動産への投機的な海外資金の動きは規制しています。一方で、月収3,300ユーロ(約60万円)以上で申請可能な「デジタルノマドビザ」を設け、実際に就労して現地の雇用を生み出す外国企業や外国人の流入は活性化させています。
戦略なしの「日本の再開発」
このように万博をきっかけに再開発されたパルク・ダス・ナソエンス地区ですが、もともと低開発だった沿岸部であることや、街中にカジノがあることなど、大阪の夢洲地区と共通点があります。
しかし、日本では外国人による投機的な不動産投資を防止する策はほとんど講じられていません。外国人向けビザについても、自国経済の活性化につながる分野を重点的にカバーするポルトガルのデジタルノマドビザのような戦略性はあまり見られません。
500万円という金額的ハードルが低すぎるとして、日本の「経営者ビザ」の出資要件は25年10月に3,000万円に引き上げられました。これまで不問だった出資者の学歴や経歴にも一定の条件が設けられ、常勤職員1名も必要となりました。
しかし、変更後も現在の為替レートでは20万米ドル以下であり、先進主要国と比べても非常に低い水準です。
「日本人」に配慮がない日本の現実
不動産が対象から外されたポルトガルのゴールデンビザは、企業設立で取得可能ですが、必要な資本金は50万ユーロ(約9,000万円)と日本より大幅に高く、雇用も5人以上が義務付けられています。
日本ももっと国内の実体経済に資する形でビザや永住権を設定しなければなりません。
そうでなければ、パルク・ダス・ナソエンス地区と地理的条件が似ている大阪・舞洲の再開発も、外国人による投機ばかりが先行し、不動産価格の不自然な高騰を生み、日本人にメリットがない形になるのではないかと危惧しています。
さらに連載記事『大谷翔平を見に「ドジャースタジアム」へ行って驚いた…!ビール×ホットドック=5000円で実感した日米スポーツ格差のヤバすぎる実態』でも、海外と日本のちがいを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。