2025年8月25日、ブルーバックスより
『カラー図解 アメリカ版 大学地球科学の教科書』
の第1巻、第2巻が上梓された。
本書はアメリカの名門大学が採用する地球学教科書
『UNDERSTANDING EARTH』(8th edition)
を全3巻の構成で翻訳したものである。
第1巻と第2巻では、プレートテクトニクスから、マントル対流など地球内部の動き、それらによって生みだされる火山や地層、岩石変成など、地球の固体部分の大きな仕組みが手に取るように理解できるつくりになっている。
また、第3巻では、大気・海洋の大循環システムから、いまや避けられない関心事である温暖化、マクロ的視点でとらえた気候大変動など、地球の表層部分の大きなメカニズムを中心に学べるようになっている。
本シリーズは、基礎から専門的な知識までしっかりと学びたい高校生や大学生の教科書として最適であるだけでなく、さらに専門的な地球科学、惑星科学、地質学の科学書を知解するための基本知識を得ることのできる良質な入門書である。
この度ブルーバックス・ウェブサイトにて本書の一部を特別公開。
我々が住む地球の「真実」をご覧ください。
*本記事は、『カラー図解 アメリカ版 大学地球科学の教科書 第2巻』(ブルーバックス)を再構成・再編集してお送りします。
ダーウィンのサンゴ礁と環礁
200年以上にわたり、サンゴ礁は探検家や旅行作家たちを魅了し続けてきた。チャールズ・ダーウィンが1831年から1836年にかけてビーグル号で大洋を航海して以来、サンゴ礁は科学的な議論の対象でもあった。
ダーウィンは、サンゴ礁を地質学の観点から考察した最初の科学者のひとりで、ある種のサンゴ礁の起源に関する彼の理論は、今なお受け入れられている。
ダーウィンが研究したのは、環礁という種類のサンゴ礁だった。環礁とは、中央に円形の礁湖が発達した大洋のサンゴ島だ。環礁の一番外側に位置するのが、大洋に面した急斜面である礁縁で、波に強く海面下にわずかに沈んでいる。
礁縁はサンゴや石灰藻の骨格が複雑に絡み合って形成された、硬くて丈夫な石灰岩からなる。礁縁の内側には、浅い礁湖へ連なる平坦なプラットフォーム状の礁原が広がる。礁湖の中央には、島がある場合もある。
環礁の一部や中央の島は海面上に突き出ており、樹木に覆われることもある。礁と礁湖には、膨大な数の動植物が生息している。
サンゴ礁の生息域は一般に、水深20m以浅に限られている。それ以上深くなると、造礁生物の生育に欠かせない十分な光が、海水を透過してこられないからだ。だが、それならどうして、環礁は深く暗い海の底からそそり立っているのだろうか?
ダーウィンは環礁の形成プロセスについて、海底火山が海面まで隆起して島を形成することから始まると提唱した。火山が一時的であれ永続的であれ休眠状態に入ると、サンゴと藻類が島の岸辺に定着し、裾礁が形成される。やがて、侵食により火山島の標高は海面付近まで下がっていく。
このような火山島が波の下にゆっくりと沈下していった場合、成長の盛んなサンゴや藻類は、島の沈降ペースに合わせて、地質学的な時間をかけて継続的に礁を築き上げていくだろうとダーウィンは考えた。そうなれば、火山島は姿を消し、その場所に環礁が残ることになる。
ダーウィンがこの説を提唱してから100年あまりが過ぎた頃に、数ヵ所の環礁で実施された深層掘削調査で、サンゴ由来の石灰岩の下に火山岩が発見された。さらにその数十年後には、プレートテクトニクス理論によって、火山活動も沈降(プレートの冷却と収縮の結果として起きる)も説明できるようになった。
* * *