竹田恒泰氏の新しい仮想通貨
明治天皇の玄孫で保守派の論客として知られる政治評論家・竹田恒泰氏(49歳)が、新たな仮想通貨を作ったとうたい多額の出資金を集め、トラブルになっていることが筆者の取材で明らかになった。
出資者のひとりが、その内情を証言する。
「竹田氏に出資するきっかけとなったのは、’18年7月に大阪のホテルで開かれた説明会です。およそ30人の参加者の前で、仮想通貨ビジネスに関する説明をしていました。
『Xコイン』という新しい仮想通貨を作る予定で、これは世界156種類の通貨に交換可能な上に、銀行よりも安い手数料で世界中に送金が可能。
すでに竹田さんは、東京五輪に来るVIPと話をしていて、五輪をきっかけに『Xコイン』を広めると言っていました。これが普及すれば銀行に代わる新しい金融システムになるというのです」
そして、「トラブル」の元となる話を始めたという。
集まった額は2億3000万円
「同時に、『Yコイン』という仮想通貨も発行するので、その資金を皆さんに出して欲しいと言われました。『Xコイン』が普及すれば、同じ発行元の『Yコイン』が値上がりするとうたっていたのです」(同前)
筆者の手元には、竹田氏が出資者に配った資金集めのための資料がある。
そこには、上場したら5000億枚の「Yコイン」を発行するといった旨の説明が書かれている。これは、投資額が10倍以上にも膨れ上がることを意味していた。別の出資者はこう振り返る。
「『Xコイン』は多くの大手企業が導入を検討中で、航空会社ANAが導入を決めたと説明を受けました。また、当時は竹田恒泰氏の父・恆和氏が日本オリンピック委員会の会長を務めていたこともあり、『東京五輪を機にXコインを広める』という話に説得力を感じてしまったのです」
こうして「Yコイン」のために集まったカネは、最低でも2億3000万円に上る。
警察が捜査に乗り込む事態に…
だが’20年になると、竹田氏サイドの関係者から、出資者たちに「Yコイン」の発行を中止するという連絡が入ったという。説明会を竹田氏と開いた主催者は「返金対応する」と言ったが、現在に至るまで返金はされていない。
「資金の受け入れはしていない」
それ以降、出資者の間では疑念が広がった。良かれと思って周囲に投資金を募った出資者に、警察が捜査に乗り込む事態にまで発展している。自らも700万円を「Yコイン」に投資した小寺太郎さん(仮名)は、こう語る。
「今年6月、都内の自宅に刑事2人が来て『仮想通貨のカネはどこにある?』と問い詰められました。私を通じて資金を投じた方が『小寺さんが詐欺をしている』と被害届を出していたようです。ただ、私は竹田さんのビジネスを信じ切っていただけで、集めた出資金はすべて竹田さんサイドに渡しています。自分自身、1円も返ってきていません」
突然の捜査を受けた小寺さんは、自らが受けた被害を警察に届け出る予定だという。
竹田氏のビジネスに近づく怪しい存在
筆者が竹田氏に取材を申し込むと、概ね次の回答をした。
「『Yコイン』について金融庁に相談した結果、我々の構想は『ブラックではないがグレーである』との指摘を受けたため、『Yコイン』の発行は見送りました。そのため、資金の受け入れはしていません。
発行計画があった時、ある人物が『仮想通貨の投資先を探している人を知っているから仲介したい』と申し出てきました。ある日、その人物が多額の現金を持参しましたが、何の書類もなく受け入れができる状態ではなかったため、拒否しています。現在、資金が返金されないという方々は、この人物に資金を預けた方なのではないかと推測しています。なので、警察へ相談すべきとお伝えしています」
また、ANAに対して、本当に「Xコイン」の導入を決めたのか聞いてみると、担当者はこう答えた。
「竹田氏が関係する仮想通貨を決済手段に使ったことは一切ありません。また使う予定もありません」
現在、竹田氏は評論・言論活動のほかにラーメン店、古墳型の樹木葬事業など幅広く事業を展開している。新しいビジネスに興味を持つのは結構だが、今回のトラブルのように怪しげな人間が出入りできない体制づくりから取り組んでみてはいかがか。
【こちらも読む】【独自】犯人は「大衆演劇の役者」…風俗街「かんなみ新地」跡で起きた地面師事件の「舞台裏」
「週刊現代」2025年09月15日号より
取材・文/竹輪次郎(ジャーナリスト)
ちくわ・じろう:民放テレビ局で20年以上にわたって報道企画に携わってきた記者・ディレクター。現在はジャーナリストとして、独自取材を信条として、性犯罪や経済事件を追い続ける