茶寮マインドをもつ美意識に満ちた喫茶空間
茶寮と茶房は似た言葉で、どちらも喫茶店という意味がある。ただ、茶寮は茶道の文化に根ざしていて、静かな環境の中でゆったりとした時間を過ごせる場所だとされている。単にお茶や甘味を提供する場ではなく、茶道の根底にある「相手を思いやり、敬う心をもちながらもてなす」空間だといえよう。そこでは飲み物や菓子だけでなく、器やしつらえ、所作などのすべてが美意識のもとに丁寧に調えられ、静かに五感へと語りかけてくる。そんな茶寮的なマインドを持つ喫茶スペースは、実は街のあちこちに潜んでいる。
これから紹介する7軒も、茶寮マインドのある店ばかり。和菓子、洋菓子、コーヒー、日本茶と、それぞれの得意ジャンルこそ異なるが、空間・味・サービスのいずれにも徹底的な美意識が貫かれているのが共通点だ。
「虎屋菓寮 赤坂店」では和菓子とともに季節の風情を味わい、「千疋屋総本店」のフルーツパーラーでは果物を扱う手さばきに見惚れながらパフェを。「櫻井焙茶研究所」では茶葉の個性と向き合い、「小川珈琲」では京都の感性を映すエシカルなコーヒーを味わおう。そのときに肌で感じる美意識の波動は、茶寮ならではのご馳走だ。(文・小松めぐみ)
小布施堂
伝統の栗菓子とともに町をあげてのおもてなしを享受
長野県小布施に伝わる「客人を心からもてなす」という、「利他」精神に触れられる老舗。栗の風味を閉じ込めた、なめらかな栗あんを使用した和洋菓子を提供し、100年以上のれんを守り続けている。17代目店主の市村次夫氏は、小布施町の町並修景事業を推進。新旧の建築物が調和する美しい町並みを実現し、今では年間来訪者が100万人を超える人気の町になっている。
小布施堂 本店
長野県上高井郡小布施町808
☎026-247-2027
日本橋 千疋屋 総本店
国内外から最高峰のフルーツが集結する江戸時代からの聖地
江戸時代後期に武蔵国埼玉郡千疋村(現埼玉県越谷市)に住んでいた創業者大島弁蔵氏が、桃やまくわ瓜を日本橋人形町で売り出したのがはじまり。日本初の果物専門店として191年間のれんを守り、随一の「信頼」感を誇っている。世界中から選りすぐった最高級のフルーツが味わえるフルーツパーラーは、明治時代に誕生した「果物食堂」がルーツ。現在も極上フルーツと伝統の技が融合した、多彩なスイーツがいただける。
日本橋 千疋屋 総本店 フルーツパーラー
東京都中央区日本橋室町2-1-2 日本橋三井タワー2階
☎03-3241-1630
虎屋菓寮 赤坂店
日本の和菓子文化とともに歩んできた御所御用の老舗
後陽成天皇の世(1586~1611年)から御所の御用を勤めている店として、「唯一無二」の存在感をもつ老舗和菓子店。じつに5世紀にわたり、和菓子を作り続けている。明治2(1869)年より東京にも店を構え、昭和39(1964)年に現在の地へ移転した。現在はギャラリーやショップのほか菓寮もあり、甘味や軽食などが味わえる。
虎屋菓寮 赤坂店
東京都港区赤坂4-9-22
☎03-3408-2331
小川珈琲
コーヒー文化の発展と持続可能な社会を目指すエシカルカフェ
創業以来70年以上、審美眼と腕を磨いてきた京都のコーヒーロースター。豆の栽培から、一杯のコーヒーになるまで手を尽くし、究極の一杯を追求し続けている。創業70周年を迎えた2022年には、未来を見据えたサステナブルなカフェをオープン。ネルドリップで丁寧に淹れた、味わい深いエシカルコーヒーを提供している。味わう人のみならず、生産者、職人など、コーヒーに関わるすべての人を大切にする「利他」精神が、一杯のコーヒーに込められている。
小川珈琲 堺町錦店
京都府京都市中京区堺町通 錦小路上る菊屋町519-1
☎075-748-1699
櫻井焙茶研究所
日本茶の新しい愉しみ方を開拓する気鋭の“研究所”
ブレンドやローストを通して日本茶の価値を最大化し、新しい楽しみ方を提案。櫻井真也店主の「クラフトマンシップ」から生み出された、日本茶の新たな世界観に出合えるはずだ。今年1月、世田谷・松陰神社前に、テイクアウトで気軽にお茶が楽しめる日本茶カフェ「SOUEN」をオープン。長年研究してきたブレンドをテーマに、季節のブレンド茶(726円~)や茶と酒を合わせたカクテルを提供している。
櫻井焙茶研究所
東京都港区南青山5-6-23 スパイラル5階
☎03-6451-1539
ヨックモック 青山本店 ブルー・ブリック・ラウンジ
季節ごとのスイーツをゆったりと味わえる都会のオアシス
バターがリッチに香る「シガール」などの焼き菓子で、「日常的な上質さ」を提供してくれるおなじみの洋菓子ブランド。青山本店に併設する「ブルー・ブリック・ラウンジ」では、ハナミズキが配されたオープンエアのテラス席をセレクトしたい。季節ごとの彩り豊かなケーキや焼き菓子は、青山本店でしか味わえないおいしさ。お酒とともに本格欧風料理が楽しめる、バールタイムも見逃せない。
ヨックモック 青山本店
東京都港区南青山5-3-3
☎03-5485-3340
KOFFEE MAMEYA -Kakeru-
自分好みの一杯と究極のマリアージュに出合えるカフェ
インバウンド客にも大人気の、コーヒー好きが集まる聖地。元倉庫の天井高を活かした心地よい空間で、コーヒー豆の産地や品種、焙煎、抽出方法による違いを体感できる。「新しいコーヒーの扉を開いてほしい」との想いから、コーヒーをコースで提供、バリスタによるていねいな説明も評判だ。高い「美」意識と「感性」によって提供されるコーヒーと、スイーツや食事とのペアリングを愉しみたい。
KOFFEE MAMEYA -Kakeru-
東京都江東区平野2丁目16-14
☎03-6240-3072
●情報は、『FRaU JAXURY MOOK 日常のラグジュアリー いまここ、日本から。』発売時点のものです(2025年5月)。
Text:Haruna Hagiwara
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