前編記事『中国「地下鉄網」が次々と赤字転落していた…!インフラ企業の低迷が映し出す「中国バブル崩壊」のヤバすぎる実態』で見てきたように、不動産市況の悪化により、さまざまな領域で中国経済は悪影響を受けている。中国経済が抱える問題はこれだけにとどまらない。
景気回復に躍起になっている中国政府にとってさらなる難題が生じつつある。
中国政府によれば、今年上半期に自然災害による直接的な経済損失は541億100万元(約1兆820億円、このうち洪水による被害が9割超)、被災者数は2300万人を超えた。7月以降も豪雨による洪水が中国全土で発生しており、消費を始め経済活動を停滞させる足かせとなりつつある。
気がかりなのは、ウイルス性の疾患「チクングニア熱」の感染が広がっていることだ。
ワクチンも治療薬もない
チクングニア熱はデング熱のように蚊が媒介する感染症で、1952年にタンザニアで初めて発見された。ヒトからヒトへの感染例はないと言われている。
チクングニア熱は7月8日に中国南部の広東省で初めて確認され、その後、広東省を中心に感染が急拡大した。たとえば広東省の仙北市だけでも感染例は約6500件に上っており(8月4日時点)、北部の北京などでも感染が報告されている。
チクングニア熱の致死率は1%未満だが、重症例では脳症や劇症肝炎が報告されてもいる。また、現時点ではワクチンや治療薬が存在しないため、防疫網が破られると感染が一気に広がるリスクがある。
チクングニア熱を予防するカギは、溜まった水を掃除し、蚊を駆除することだが、折からの豪雨が災いして対策が後手に回っているのが実情だ。
またもやロックダウンか
中国政府は事態を静観視しているが、病原体に感染した蚊は風に乗って一晩で数千km移動できることがわかっており、中国全土で感染が蔓延する可能性は排除できないだろう。
危機感を高める広東省は、新型コロナのパンデミック時におなじみだったPCRの強制検査を復活しており、「ロックダウンも時間の問題だ」との悲鳴が聞こえてくる。コロナの時よりも事態が深刻なのは、地方政府の財政難により検査が有料で実施されていることだ。住民の懐がさらに厳しくなることは間違いないだろう。
チクングニア熱が中国経済に致命的な打撃を与えてしまうかもしれない。
中国でのチクングニア熱の蔓延は日本にとって「対岸の火事」ではない。
米疾病対策センター(CDC)はチクングニア熱の感染例の増加を理由に中国への渡航に関する注意情報を発出する準備を進めている。今年4月に設立された日本版CDCも同様の取り組みを直ちに実施すべきではないだろうか。
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