結婚観を変えた桂子・ハーンとの出会い
昨年は、連続ドラマと映画で5作品の主演を務めたほか、新たにCMにも起用されるなど飛躍の年だった。2月に30歳という大台に乗ったが、実力派女優・奈緒の活躍ぶりは今なお衰える気配はない。そんな奈緒の名前が一躍脚光を浴びたのは’19年の連続ドラマ『あなたの番です』のストーカー役の怪演だ。以降、様々な役柄を演じ切り、着実にキャリアを重ねている。今年は、故郷・福岡から上京してちょうど10年という節目の年でもある。
30歳になって5ヵ月が過ぎた。今の年齢をどう捉えているのか。
「人は35歳ぐらいまでに人生のパートナーや生涯の仕事と出会う確率が高いらしいので、あと5年、どんな人や作品と出会っていくのか、すごくワクワクしています。いろんなボーダーを超えるというのが私の30代の目標だから、それこそ国境を越えて誰かとモノ作りができる機会があれば参加したい。企画段階から携わっていくということにもとても興味があります」(以下、「」は奈緒のコメント)
ターニングポイントは20歳で上京したことだが、その時にこの先10年の人生計画を立てたそうだ。仕事中心の計画だったが、自分の想像を超えるぐらい叶ったという。
「30代になってまた10年計画を立てているのですけど、今回は自分のやりたいことだけではなく、母の年齢のことや、一度考えることをやめた結婚についても、もう一度向き合ってみようと思うようになりました」
そんな結婚に前向きな気持ちになれたのは、8月5日にスタートする主演舞台『WAR BRIDE ―アメリカと日本の架け橋 桂子・ハーン―』の影響が大きい。今作は’51年、20歳の時に自らの意志で米軍兵士・フランクと結婚し、アメリカに渡り、「戦争花嫁」と言われた桂子・ハーンの人生を描いた実話が原案である。
「実際にアメリカで桂子さんにお会いしたことで戦争という言葉の持つ意味をより深く知ることができました。当時は人種差別を受け、悔しい思いも苦い経験もたくさん味わわれたと思います。そんな桂子さんを支えたのはフランクさんの愛であり周りの方たちの温かい励ましだったんです。ですから、家族との生活を大切にする傍ら、日米の架け橋となるべく生け花や習字、日本庭園などの日本文化を広めることに頑張ってこられた。
現在、94歳ですけど、桂子さんと一緒に街を歩くと知り合いの方に会うたびに『今度私のことを演じてくださる奈緒さんよ』って紹介してくださるんですよね。本当に桂子さんは、愛に満ちた魅力的な方で、町の人気者でしたね」
現在とは違い、戦後間もない頃に自分の人生を切り開いていった強い意志の人である桂子と3日間過ごしたことでたくさんのヒントをもらったという。
「桂子さんと同じような境遇でアメリカに渡ってもうまくいかなかった方たちもたくさんいると思うんです。そんな逆境の中で様々なことに感謝し、居場所を見つけることができた桂子さんの物語を希望として沢山の人に伝えたいと思いました。もし、私が桂子さんの立場であったらどうするかと考えた時に、この人を守りたい、この人と愛を育てていきたいと確信し合える相手と出会ったなら、どこにでも一緒に行かなきゃいけないと思うだろうなって。
ただし、私自身は、誰かと一緒に人生を歩みたいと思っても、いろんな壁や障害物を想像してしまいがちなんですね。だけど、桂子さんと共に過ごしたことで一歩踏み出してみないと未来のことなんてわからない。未来を想像して後悔するような選択だけはしないでおこうと素直に思えた。だから、自分の人生の目標の1つとして、結婚という形になるかはわからないけれど、誰かと歩んでいくということも絶対に叶えたいと思うようになりました」
プライベートで続けていること
今は舞台に全力投球中だが、健康のために食生活などにも気を配っている。
「去年、『あのクズを殴ってやりたいんだ』というドラマでボクシングに出会ったことで、初めて食事をとらないという方法以外の食事制限をしました。要は、きちんと筋肉をつけるという体作りを経験したことで、食べ物でここまで体が変わるんだということを学んだんです。
そこから、栄養素や自分には何が足りていないのかということも含めてアプリでその日食べたものを記録するようになりました。今もキックボクシングは続けていますし、ジムにも通っています。体の動かし方って本当に奥が深いんです。ポジション1つで鍛える筋肉も変わってくるんですから」
生活習慣も見直していて、まずは早寝早起きを実践している。
「夜は10時ぐらいにお布団に入って、朝は5時に起きます。出かけるときの準備をしたり、運動をしたりしても時間は余るので、悩みとかいろいろな物事に向き合って整理する時間にしています。早朝ってすごく静かなので頭もクリアな状態ですから、考え事をするには最適なんです」
そういえば、酒場詩人・吉田類のファンで奈緒自身、お酒好きで日本酒愛好家でもあるとか。
「家ではビールを飲むことが多いのですけど、日本酒もウイスキーもその日の気分で飲みます。昔は仕事終わりの1杯を母と2人で飲むのがルーティンだったんですけど、母が体を気遣って飲まなくなったので今は1人酒ですね。私は食べるのも大好きなので、料理と合ったお酒を飲むというのが最近の楽しみの1つです」
趣味も多く、読書や映画鑑賞はもちろん、大好きなカレー屋巡りやプロレス観戦、一時は美大を目指していたそうでイラストを描くのも得意である。
「相変わらず格闘技を観に行きますし、旅行も好きです。カメラも趣味なので写真を撮りにお散歩をすることもありますね。お友達と手話で会話をする機会があるので手話も覚えましたし、乗馬にもよく行ってます。スイスの山で乗馬をしたこともあるんですよ。乗馬もそうですけど、着付けの勉強も、もしかしたら時代劇で使うかもしれないと趣味もお仕事に絡めて考えてしまうことが多いです」
今は料理にハマっているそうで、食生活アドバイザーの資格を取りたいと思っている。
「あと、言語に関してすごく興味があるので、もっと勉強して語学検定を受けたいですね。英語と韓国語の資格を取れればいいなって。アメリカで戦争花嫁の方たちを取材させていただいた時に、60歳を超えてから大学に通ったという方がいてすごく刺激を受けたんです。何歳からでもチャレンジはできるんだなあと改めて思ったので、私も機会があれば語学と文化を学びたい」
別れ際、「30代はますます面白そうですね」と声をかけると、「自分がどうなっているのか、どこにたどり着いているのか。人生を楽しみながら自分の行き着く先を見てみたいと思います!」と、キッパリ。
言葉を一つひとつ選びながらも真摯に語る姿にはとても好感が持てる。今の自分の実力を謙虚に把握し、その上で目指す頂に近づこうとする奈緒の今後が楽しみでならない。
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