泉24%、立花8%
参議院選挙が佳境に入る中、メディアで連日取り沙汰されているのが、兵庫選挙区だ。定数3に対し、13人が立候補する大激戦となっている。
メディアの世論調査では、以下のような結果が出ている。
泉氏:24%
加田氏:8%
高橋氏:12%
藤原氏:10%
吉平氏:12%
多田氏:6%
立花氏:8%
世論調査で大差をつけてトップを走るのは、前明石市長の泉房穂(いずみふさほ)氏だ。2番手、3番手には、公明党現職の高橋光男氏、維新の新人・吉平敏孝氏が続いている。その後に自民党の現職、加田裕之氏、NHK党の元参議院議員である立花孝志氏、国民民主党の新人・多田ひとみ氏、らが僅差で続いている。
中でも注目されているのは、当選が濃厚とみられる泉氏に対し、立花氏が仕掛けている「攻撃」だ。
この二人の「因縁」は、昨年11月の兵庫県知事選挙にさかのぼる。当時、内部告発の疑惑に揺れていた斎藤元彦知事が再選された選挙だ。
立花氏はその際、「自分には投票しないでほしい。斎藤知事に1票を投じてください」と、当選を目的としない前代未聞の出馬。斎藤氏の演説が終わると同じ場所で語るという「抱きつき街宣」は、「2馬力選挙」ではないかと批判を浴びた。
「泉房穂ちゃん」
この知事選において、立花氏は選挙用ポスターで、知事選には立候補していない泉氏をターゲットとして、以下のような文言で攻撃した。
《前明石市長のパワハラを思い出せ!泉房穂氏前明石市長のパワハラ報道とその後の選挙を思い出してください》
参議院選挙の直前にも、立花氏は自身のX(旧Twitter)に《泉房穂氏が、斎藤元彦知事を知事の座から引きずり下ろした黒幕???》と投稿。さらに、泉氏が明石市長時代に問題となった「暴言」を、自身のYouTubeチャンネルでモノマネを交えながら取り上げている。
選挙戦が開始されると、立花氏は次のように発信している。
《泉房穂ちゃんは、14時間もポストなし! 逃げて 逃げて 逃げ回る 参議院選挙に立候補している! 泉房穂ちゃん!泉房穂ちゃんの選挙カー見つけたら、連絡下さい!》
《あなたも選挙カーに乗ってマイクを使って【火をつけて燃やしてこーい】って泉房穂ちゃんのモノマネが出来ます》
《泉房穂ちゃんが、逃げて、逃げて、逃げ回る》
また、NHK党の齊藤健一郎参議院議員も、自身の選挙カーについて
《こちらの選挙カーは立花孝志と別行動で選挙運動を行います。以下使命です。泉房穂さん選挙カーの追っかけ》
《泉房穂さん発見情報! ダメだココから3時間21分は間に合わない!!》
などと投稿し、泉氏に対し「喧嘩」を売り続けている状況だ。
「しゃべったこともない」
なお、泉氏は選挙告示日には街頭演説などの日程をSNSで公表していたものの、選挙2日目からは事前の告知をしなくなった。
立花氏の狙いは、知事選に続く「二匹目のどじょう」だ。泉氏の街頭演説で抱きつき「炎上」させることで注目を集め、票を伸ばそうという戦略である。これは、斎藤知事の選挙で行われた「2馬力選挙」とは正反対の「逆2馬力選挙」を展開していると言える。
7月6日の最初の日曜日(選挙サンデー)、午前11時頃、泉氏はSNSでの告知なしに、自身の事務所がある神戸市の商店街に現れた。
泉氏が
「泉房穂です」
「事務所がある商店街、地元の皆様にお願いにあがりました」
と両手を広げ大声で叫ぶと、大勢の人が殺到した。泉氏は握手や写真撮影で大忙しの様子。駆け付けたメディアの中には、取材に夢中になるあまり、商店街の植栽に気づかず激突し、路上に土が散乱する場面すら見られた。泉氏は、世論調査でトップを走るその人気の高さを見せつけた。
商店街での挨拶と街頭演説を終えた泉氏に、立花氏の「攻撃」について尋ねると、泉氏はこう語った。
「今まで会ったことも、しゃべったこともないので、わかりませんわ。他の候補がどうだとか、関係ありません」
「想定内」
さらに、泉氏はこう付け加えた。
「立花氏のSNSのことを(メディアが)聞きたいというのはわかります。私もメディアにいたからね。
私がSNSで街頭演説の告知を発信していないのは、立花氏とは関係ない。猛暑や雨の日、風の日もありますからね。立花氏がやってくることは、選挙前からわかっていました。想定内のことです。
私の悪名はもう有名ですから。選挙期間中に、どれだけ国民のための政治を頑張ってやるかを知ってもらうだけです」
と語る泉氏だが、その支援者の中には、異なる意見を持つ者もいる。
「立花氏は何をするかわからん。事実、自身の街頭演説でも物騒な発言を繰り返しているので泉氏は日程を公表しない方がいいでしょう。予期せぬことも考えられますからね。
実際、立花氏は劣勢だった斎藤知事を当選させた原動力ですよ。相手にしないのが一番いい」
と話す支援者もいる。
立花氏VS泉氏の攻防は、さらにヒートアップしている。
参政党を筆頭に野党の台頭が下馬評となっている参議院選挙。兵庫県選挙区でも自民・公明の与党は低調とみられている。
泉氏のトップ当選が確実視され、参政党、国民民主党、維新が議席をうかがう展開の中、加田氏の陣営は次のように語っている。
「正直なところ、泉氏の圧勝、70、80万票を超える大量得票は仕方ないでしょう。立花氏が泉氏とバトルを繰り広げてくれ、その結果としてこちらに追い風が吹いてくれればありがたいと考えています」
一方立花氏は、選挙戦、最終日の演説を泉氏のホームグラウンド、明石市で行うと公表している。情勢調査でも、立花氏も当選圏内につけている。
泉氏以外の2議席がどうなるか、見物である。