SNSの存在感が急速に高まっている。SNSの活用なしに選挙は勝てないとも言われ、今や若年層だけでなく、あらゆる世代へSNSの認知度は高まっている。Instagram、X(旧Twitter)などのソーシャルメディアプラットフォームを駆使するSNSマーケティング市場は、新たな成長ステージへ突入する公算が大きい。
口コミやシェアによって情報を自然に広げる拡散性に加え、顧客と双方向にコミュニケーションをとれる点も魅力だ。ブランド認知度を高めつつ、売上拡大につながる効果的な施策を打てる。また、コストパフォーマンスの高さも注目されている。テレビ広告と比べて2倍以上の費用対効果が見込めると言われ、多くの企業が広告費を削る中でもSNSを中心とするデジタル広告への投資は増加の一途をたどっている。
サイバーエージェント(4751)
■株価(7月4日時点終値)1545円
自社メディア、ゲーム、さらにはIP(知的財産)事業へと多角的に展開し、それぞれの事業でSNSマーケティングの恩恵を最大限に享受している。注目すべきはインターネットテレビ「ABEMA(アベマ)」を展開するメディア&IP事業がついに黒字局面へ突入したことだ。ABEMAを集客エンジンとし、IPの立ち上げから展開までを垂直統合できる事業構造を持つことから、「ウマ娘」に代表されるグローバルヒットを生み出す体制を強化しつつある。
同社はダイレクトメールやYouTube動画をAIで制作し、モデル起用コストの抑制や効率化を実現している。自社開発の生成AIによる広告クリエイティブの自動生成も軌道に乗りつつある。また、自社広告ビジネスへの活用に加え、顧客のコンテンツ制作をAIを用いて請け負うサービスも提供している。
消費者一人ひとりに訴求するパーソナライズド広告(個々の消費者の興味や行動履歴に合わせて最適化された広告)が主流となる中で、AIによる広告制作の効率化で優位性を高めつつある。
LINEヤフー(4689)
■株価(7月4日時点終値)524.9円
「LINE」、「Yahoo! JAPAN」、「PayPay」という3つの巨大なプラットフォームを擁し、デジタル広告やEC(電子商取引)、金融サービスなど多角的な事業を展開する圧倒的プラットフォーマーだ。PayPayの米国市場での上場により、決済だけでなく、金融サービス全般へ領域を広げることで、巨大な経済圏を構築しようとしている。
LINEアプリのリニューアルにも注目が集まる。特に注目すべきは約1億人の月間アクティブユーザー数を誇るLINEミニアプリの展開だ。2026年度以降にマネタイズを開始し、2028年度までに売上1,000億円を目指す。公式アカウントとの相乗効果(シナジー)も見込まれ、様々なサービスにAIを組み込むなど、収益性と機能性の向上に大きく寄与する期待がある。
安定した収益基盤と強固な財務基盤を背景に、2026年3月期までの3カ年で、戦略投資や株主還元などに5,800億円を投じる方針で、今後のM&Aによる事業領域の拡大にも期待が高まるだろう。
イー・ガーディアン(6050)
■株価(7月4日時点終値)2096円
SNSマーケティング市場の健全な発展を支える企業にも注目したい。インターネット上の投稿監視(不適切動画、フェイクニュース、誹謗中傷など)を主力とする同社は、本人確認、広告審査、ソーシャルリスニング、サイバーセキュリティなど、ネットセキュリティに関するあらゆる課題をワンストップでサポートしている。SNSマーケティングの活発化につれて需要が高まる期待があろう。
2025年9月期第2四半期累計(2024年10月~2025年3月)は、EC・フリマ系やフィンテック系などのサービスが牽引し、連結経常利益は前年同期比7.0%増の9.3億円に伸び、従来の10.3%減益予想から一転して増益での着地となった。近年、バイトテロや企業のハラスメント問題などがSNSで拡散され、深刻な社会問題となるなか、取引先やコンプライアンス(法令遵守)の調査案件も増加している。
また、消費者庁より2025年~2027年度の「インターネット通信販売等適正化事業」を受注した。これはインターネット上における通信販売の不適切広告を巡る消費者トラブル防止に資する事業だ。
パルグループホールディングス(2726)
■株価(7月4日時点終値)3580円
SNSマーケティングの関連サービスを提供する企業だけでなく、内製化で積極展開している企業にも注目したい。同社は「チャオパニックティピー」や「ディスコート」など多数のアパレルブランドを展開するほか、300円ショップの「3COINS(スリーコインズ)」など複数の雑貨ブランドも展開している。
幅広いブランドを展開する同社が成長戦略の中心に据えているのがSNSの積極活用だ。同社は商品広告をほとんど出さず、代わりに店舗スタッフとしても働く約90人の社内インフルエンサーがSNSで情報発信を後押ししている。フォロワー数の伸びなどは人事評価に反映され、年間賞与だけで1,000万円を超える事例もある。
約350店舗が「飽きない売り場」づくりを進め、トレンド情報を発信できることに加え、商品の企画から製造、販売までを一貫して行うSPA(製造から小売りまでの一貫モデル)化率は約8割という高さも強みとなる。2026年2月期の連結経常利益は前期比10.3%増を見込み、4期連続で過去最高益を更新する見通しだ。
AnyMind Group(5027)
■株価(7月4日時点終値)536円
法人向けの「ブランドコマース領域」と、ウェブメディアやクリエイター向けの「パートナーグロース領域」が二本柱だ。「ブランドコマース領域」では、EC(電子商取引)やD2C(消費者向け直接販売)におけるブランドの設計から物流、マーケティング、ECサイト構築までをワンストップで支援する。一方、「パートナーグロース領域」では、インフルエンサーのデータ分析などを通じて広告収益の最大化を支援している。
同社はショート動画プラットフォーム「TikTok」のすべての公式パートナー認定を国内を含むアジア6か国で取得している。TikTokが商品購買機能を持つ「TikTok Shop」に参入したことで、SNSとECの融合で高い集客力が期待される。海外売上比率が5割を超える同社にとって「TikTok経済圏」での同社の存在感は今後一層高まるだろう。
AIを活用したプロダクト開発にも注力している。中でも生成AIライブコマースプラットフォーム「AnyLive」は画期的だ。人とAIライバーのハイブリッド配信により、24時間365日ノンストップでのライブコマース配信を可能にしている。
個人情報保護の重要性が高まり、サードパーティークッキー(ウェブサイトをまたいでユーザーの行動を追跡するために利用されるデータ)などの規制強化も進んでいる。しかし、専門的な知識とスキルを持つ企業にとっては、むしろ競争優位性を築くチャンスともなるだろう。
人工知能(AI)とビッグデータを活用する技術を組み合わせることで、より精度の高いターゲットマーケティング(特定の顧客層に絞ってアプローチする手法)が可能になれば、SNSマーケティングの市場成長性はさらに高まっていきそうだ。
「宇野沢茂樹」の名前を不正使用した偽のSNSアカウントが確認されています。投資詐欺等に悪用される恐れがあるため、ご注意ください。SNS等で個人名義の情報発信は一切行っておりません。